八大童子のこと
不動明王に付き従う8人の童子で、八大金剛童子とも呼ばれる。 恵光(えこう)・恵喜(えき)・阿耨達(あのくた/あくた/あのくだった)・指徳(しとく)・烏俱婆伽(うぐばが/うぐばか)・清浄比丘(しょうじょうびく)・矜羯羅(こんがら)・制多伽(せいたか)で、作例としては矜羯羅と制多伽の二童子が付き従う「不動三尊」のものが多い。
国宝『八大童子立像』
鎌倉時代を代表する仏師「運慶」の一門によって制作され、元は鳥羽天皇の皇女である八条女院が建立した国宝『不動堂』に安置されていた。 恵光・恵喜・烏俱婆伽・清浄比丘・矜羯羅・制多伽の6躯が国宝に指定され、阿耨達童子と指徳童子は附として国宝指定されている。 阿耨達童子と指徳童子は制作当初の像が何らかの理由で失われたようで、鎌倉後期~南北朝時代頃に後補されたと考えられ、作風も異なる。
恵光童子(えこうどうじ)
黄色の肌で、頭にはヘアバンドのような冠をつける。 眉間にしわを寄せる憤怒の表情で、手には月輪を乗せた蓮華を持つ。
恵喜童子(えきどうじ)
赤色の肌で、右手には三叉戟を、左手には宝珠を持ち、頭には鍔のない兜をかぶっている。
烏俱婆伽童子(うぐばがどうじ)
髪が明王のように逆立ち、8躯の中ではっもっとも憤怒形が強く、裳裾が風にあおられるなど躍動感がある。 右手に独鈷杵を持ち、左手は拳を腰にあてている。
清浄比丘童子(しょうじょうびくどうじ)
「比丘」は僧侶のことで、剃髪に袈裟の姿をしている。 歯を食いしばる様にして、右手に三鈷杵を、左手に経巻を持っている。
矜羯羅童子(こんがらどうじ)
肌は白色で、合掌をする両手に独鈷杵を持つ。 一般的に柔和な表情で表されることが多い矜羯羅童子は、この作例でも最も穏やかな表情をしている。
制多伽童子(せいたかどうじ)
赤色の肌で、頭には髷が5つの五髻が結われ、右手に金剛棒、左手に金剛杵を持つ。 一般的には瞋心悪性の姿で表現されるが、この作例ではキリリとした表情をしている。
阿耨達童子(あのくたどうじ)※附指定
他の7躯は立像だが、阿耨達童子だけは右足を下した半跏の姿で龍王に乗る。 左手には蓮華を持ち、右手はやや下方で何かを持つような姿だが、現在は何も持っていない。
指徳童子(しとくどうじ)※附指定
四天王や十二神将のような鎧兜に身を包み、右手には三叉戟、左手には法輪を持つ。
この国宝を観るには
高野山の文化財を保管・展示する「霊宝館」で公開されることがあるが、数年に1度と機会はあまり多くない。 外部の展覧会へ貸し出されることもある。
公開履歴
2024/7/20~10/14 高野山 霊宝館「金剛峯寺-その成立と宝物」制多伽・矜羯羅・恵光伽・烏俱婆誐童子
2024/1/20~4/14 高野山 霊宝館「密教の美術」附指定の阿耨達童子像のみ
2022/10/1~11/20 愛媛県美術館「国宝 高野山 金剛峯寺」恵光童子・烏俱婆伽童子のみ
2021/4/17~11/28 高野山 霊宝館「高野山の名宝」
2017/9/26~11/26 東京国立博物館「運慶」
2015/4/2~5/21 高野山霊宝館「高野山三大秘宝と快慶作孔雀明王像」
2014/10/11~12/7 サントリー美術館「高野山の名宝」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-254
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00091-00
【種別】彫刻
【指定名称】木造八大童子立像〈(恵光、恵喜、烏倶婆〓、清浄比丘、矜羯羅、制多伽)/(所在不動堂)〉
【ふりがな】もくぞうはちだいどうじりゅうぞう
【員数】6躯
【国】日本
【時代・年】鎌倉時代
【附指定】木造阿耨達童子像1躯、木造指徳童子像1躯
【所有者】金剛峯寺
【重文指定日】1897.12.28
【国宝指定日】1955.02.02