国宝『蒙古襲来絵詞』
鎌倉時代以降に武士の力が強くなると、「軍記」と呼ばれる芸術のジャンルができ、小説や絵画が多く作られる。 この『蒙古襲来絵詞』は、2度の元寇で戦った肥後国(現在の熊本県)の御家人「竹崎季長(たけざきすえなが)」の活躍を描いたもので、氏神の甲佐大明神へ奉納するために描かせたと考えられている。 画中の人物には人名が添えられ、服装や武器なども正確に描かれているので、歴史資料としての評価も高い。
この国宝を観るには
2021年秋に国宝に指定されたばかりだが、それ以前にも三の丸尚蔵館や国立博物館等での特別展へ出展されていたので、今後も公開される機会があると思われる。
公開履歴
2023/11/3~12/24 皇居三の丸尚蔵館「皇室のみやび 第1期」
2022/8/6~9/25 東京藝術大学大学美術館「日本美術をひも解く」
2021/7/20~8/29 九州国立博物館「皇室の名宝」
2020/10/10~11/23 京都国立博物館「皇室の名宝」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-11961
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】164
【種別】絵画
【指定名称】紙本著色蒙古襲来絵詞
【ふりがな】しほんちゃくしょくもうこしゅうらいえことば
【員数】2巻
【国】日本
【時代・年】鎌倉時代
【寸法・重量】
前巻 縦39.8cm、長2351.8cm
後巻 縦39.8cm、長2013.4cm
【品質・形状】紙本著色
【伝来・他】(…名和家―)大矢野家―宮内省(明治23年買い上げ)・皇室―国(平成元年寄贈)
【所在地】宮内庁三の丸尚蔵館
【所有者】国
【国宝指定日】2021.09.30
【説明】文永11年(1274)と弘安四年(1281)の二度にわたる元寇に参戦した肥後国の御家人・竹崎季長(?~1246~?)をめぐる顚末を描く絵巻物である。欠失が多く複雑な様相を呈しているが、現状の主要部分については13世紀末には成立していたとみられる。絵は宮廷絵所周辺の優秀なもので、鎌倉時代の軍記絵としては、制作とほぼ同時代の事件に取材する点で独特の位置を占め、一介の御家人から見た事の顚末を記録しようとした点では、稀有の作と言える。モンゴル帝国の拡大によって世界各地で巻き起こった事件のひとつとしての元寇とほぼ同時期における視覚資料としては類例を見ない貴重なものであり、我が国の文化史上、比類ない価値を有する作例として極めて高く評価される。