10/9鑑賞ログ追加
桃山の華 展
五島美術館の秋の館蔵品展は「桃山」がテーマで、絵画、陶芸、書跡と幅広い展示内容のようです。 桃山時代はちょっとアバンギャルドというか、大胆な意匠が多くて、びっくりするくらい現代的なデザインがあって驚きます。 チラシ裏に出ている「加藤清正母像」の着物など、すごく大胆でオシャレなんです。 桃山といえば茶の湯が文化の中心だったので、漫画の「へうげもの」から茶の湯に興味を持った私は、織部焼きや千利休の書などグッとそそられるものだらけです。
「人と筆跡」「茶道」「漆芸」「琳派と絵画」「絵本 ・ 絵巻 ・ 出版」「桃山時代の陶芸」に分かれていて、特に陶芸や絵画の数が多そうです。 個人的には「琳派と絵画」が楽しみで、宗達の下絵に光悦が書を書いたものが2点、光琳と乾山兄弟の絵画も2点ずつ公開されるようです。 「絵本 ・ 絵巻 ・ 出版」も豪華で、大江山絵巻や曽我物語など江戸時代の作品が並ぶようです。 紫式部日記の特別公開もあるので、琳派コーナーと合わせると、絵画はかなりのボリュームです。 陶器では、この館の名物の1つ「破袋」の水差しは大好きな作品ですし、茶入が5つも並ぶようでこれも楽しみです。
この展覧会で観られる国宝
古林清茂墨蹟 送別偈
偈(げ)は仏を讃える漢詩のことで、中国・元時代の名僧「古林清茂(くりんせいむ)」が、日本からの入元僧で弟子の「別源円旨」の送別にあたって書き贈ったものです。 別源円旨が開山の弘祥寺から朝倉氏、織田信長を経て、家臣の丹羽長秀へ伝わったと来歴がすごいです。
紫式部日記絵詞 1・2・3段
10/9~10/17のみ公開、他の期間は模写本を展示
秋の恒例、紫式部日記の公開です。 9日間だけの公開ですが、これ以外の期間は現状を忠実に模写したものが公開されます。 中宮彰子に仕えていた紫式部の宮仕え中の日記で、後の後一条天皇が生まれたお祝いの儀式や祝宴など華やかな場面です。
五島美術館の庭園
五島美術館の入口正面には芝生が広がっていて、庭園に出ることができます。 入口の開放的な雰囲気からは想像できませんが、斜面を降りるように石畳の道があり、木々の中を散策することができます。 残念ながら国の登録有形文化財に指定された茶室は、特別な期間しか公開されていませんが、散策道の途中には古墳があったり池があったりと、とても楽しめます。 美術館の観客のわりに、庭園で人に会うことが少ないので、もったいないなぁと思っています。
こちらの庭園で一番魅力なのが、仏像好きにはたまらない「石仏」がものすごくたくさんあるんです。 六地蔵や六観音は、タイプの異なる石仏を組み合わせてあったり、頭がなくなってしまったお地蔵さんに丸い石を乗せて頭に見立てたり、それぞれに味わいがあるので、見ていて飽きません。
庭園を下りきったところには出口専用の門があって、ここから出ると10分もかからずに二子玉川のショッピングモールまで歩けるので、行きは上野毛から、帰りは二子玉川へというのが私の定番コースになっています。
展覧会 概要
期間:2021/8/28~10/17
時間:10:00~17:00
休館:月曜日(9/20は開館し、9/21が休館)
料金:一般¥1,000、高大生¥700、中学生以下無料
五島美術館 公式サイト
鑑賞ログ
毎年秋の10日間前後しか公開されない国宝『紫式部日記』を観に、久しぶりに五島美術館へ行ってきました。 紫式部日記効果かコロナが下火になったからか、週末の昼下がりにはそこそこ人が入っています。
今回は「桃山の華」というテーマで、まずは戦国武将や茶人の書状類や肖像画から始まります。 くずし字がまだしっかし読めない私にとっては、キャプションに読み方が添えてあるのがとても嬉しいです。 続いて、桃山時代に文化の中心だった茶の湯に関する展示で、室町から続く唐物(宋や元時代の中国からの文物)の名品が多く、国宝の『古林清茂墨蹟』はこのコーナーで公開されています。 名物茶入れが並ぶ姿は圧巻で、茄子型・文琳・大海・肩衝と代表的な姿が揃っているので、初心者の方は見比べて覚えるチャンスですよ。
第1室の後半は「琳派と絵画」で、光悦の筆跡が多いですがどれも料紙が美しくて、絵画を観るような楽しさです。 陶芸で有名な光琳の弟の乾山筆の絵画が2つあって、雪松図の立体的な雪の姿と、歌舞伎座の緞帳にしたいような花鳥図屏風の、冬に群れでうずくまるサギ?の姿にもグッときました。 江戸時代の絵巻や出版のコーナーでは、伊勢物語とそのパロディの仁勢物語?!が並んで展示されているのが憎いですね。 同じ内容のページが並んでいて、文章も挿絵もパロディになっています。 これでクスっとするとは、江戸時代の人たちの教養の高さに驚きます。
受付を挟んだ反対側の第2室に入って驚いたのが、自然光が入る展示になっていたことです。 庭側が全面ガラスになっていて、半分ほどには障子のようなパネルがあり、茶室の中のような明るさで茶陶を楽しんでねという心憎い演出です。 書画などは自然光はNGでしょうが、陶器類はこのような展示をしてくださる美術館があって、嬉しいですね。 ここでは日本で作られた陶器が集められていて、楽焼、黄瀬戸、備前、志野、織部と、桃山時代以降に珍重されるようになった、面白味のある作品が多いです。 特に印象に残ったのが、千利休の好みで楽焼を完成させた長次郎の赤楽茶碗で「夕暮」の銘の通り、錆がかったオレンジから黄土色のグラデーションが美しい茶碗でした。 これで緑色の抹茶を点てたらどんなに美しいでしょうか。
10/17(日)までですので、歴史特に戦国が好きな方や、寛永の華やかな文化が好きな方、茶の湯が好きな方は、ぜひ足を運んでみてください。