国宝 源氏物語絵巻 展
紫式部が書いた「源氏物語」は、西暦1,000年前後、今から約千年前に書かれました。 当時の写本は残っておらず、鎌倉時代に入ってからの写本が現存しますが、写本の系統によって内容が異なるようです。 平安時代末~鎌倉時代頃からは、この絵巻のような二次創作も盛んになり、こちらの源氏物語絵巻は現存最古で、白河上皇や鳥羽上皇の周辺で作られたものだと考えられています。
尾張徳川家には、絵15面・詞書28面が3巻の絵巻物として伝来しましたが、昭和初期に保存の観点から断簡されて額装になっていました。 額装でも別の保存上の問題が出たようで、5年に及ぶ修理でまた巻物に戻されたのだそうです。 「断簡」というと、ちょん切ってしまって取り返しのつかないようなイメージですが、巻物は習字の半紙のようなサイズの紙を貼り合わせているので、その継ぎ部分をきれいにはがせば、また元の状態に近く戻せるのだそうです。 公式サイトには、修理後は15巻の巻物になったと書いてあるので、15面の絵ごとに巻物にされたようですね。
今回は、修理が完了した記念で、前後期で全てが公開されるようなので、お近くの方がうらやましいです。 なお、五島美術館の所蔵する1巻分4面の『源氏物語絵巻』は元は一連の作品だったそうで、五島美術館では毎年GW頃に公開されますよ。
この展覧会で観られる国宝
源氏物語絵巻
元は3巻の絵巻物だったそうですが、この並びからすると、第15~17帖の蓬生・関屋・絵合が1巻、第35~36帖の柏木・横笛が1巻、第44~50帖の竹河・橋姫・早蕨・宿木・東屋が1巻でしょうか。 第47・48帖の総角・早蕨が抜けていますが、制作時期には並びが異なったのかもしれません。
第15~17帖の蓬生・関屋・絵合は、須磨明石に隠棲していた光源氏が都に戻り、若い頃に関係した女性たちに再開したり、光源氏が後見者になって入内させた六条御息所の娘(後の秋好中宮)が宮中の絵合せで勝利するといった、若き光源氏が栄華にさしかかる明るい時代です。
第35~36帖の柏木・横笛は、准太上天皇の位を得て栄華を極めて中年を過ぎた光源氏が、正妻として迎えた先帝の愛娘の女三宮と、柏木衛門督(友人の頭中将の子息)が密通していることを察し、柏木が心労からか体調を崩して亡くなる頃や、亡くなった後に形見の横笛が光源氏の手に渡るあたりです。
第44~50帖の竹河・橋姫・早蕨・宿木・東屋は、宇治十帖と呼ばれる光源氏が亡くなった後の話で、竹河は玉鬘のその後を書く外伝的な1帖、橋姫は八宮の姉妹との恋愛の始まりで、薫の想い人大君が亡くなるまでを書く椎本と総角は含まれません。 宿木では父と姉を亡くした中の君が匂宮に重く迎えられるところを、東屋は大君と中の君の異母妹で大君の面影を残す浮舟が居場所を転々とし、薫によって宇治にうつされるあたりです。
個人的な好みとしては、柏木前後や宇治十帖は物語としては面白くなるあたりですが、厭世観が強くなってくるので、やはり華やかな絵合あたりを観てみたいものです。
前期(11/13~11/30)
蓬生(第15帖)
柏木1(第35帖)
柏木3(第35帖)
竹河1(第44帖)
橋姫(第45帖)
早蕨(第48帖)
宿木2(第49帖)
東屋2(第50帖)
後期(12/1~12/12)
関屋(第16帖)・絵合(第17帖)
柏木2(第35帖)
横笛(第36帖)
竹河2(第44帖)
宿木1(第49帖)
宿木3(第49帖)
東屋1(第50帖)
婚礼調度(初音の調度)
徳川美術館は、特別展や企画展をする展示室と別に、武具や能などジャンルごとに分かれた名品コレクション展示室があります。 内容は1~2ヶ月ごとに展示替えされ、刀剣や奥調度の展示室では国宝が公開されることも多いですが、今回は残念ながら国宝刀剣はありません。 この展覧会の期間中は、初音の調度と呼ばれる婚礼調度から「初音蒔絵色紙箱」が展示されています。
展覧会 概要
期間:2021/11/13~12/12
時間:10:00~17:00(入館は30分前まで)
料金:一般¥1,400、高大生¥700、小中生¥500(毎土曜は高校生以下無料)
ナイトミュージアム
日程:11/20(土)、12/4(土)
時間:17:30~19:00
料金:¥3,850(事前に公式サイトからチケット購入)
徳川美術館 公式サイト