龍谷ミュージアムのこと
西本願寺は浄土真宗本願寺派の総本山で、龍谷大学は江戸時代初期に西本願寺に設立された僧侶のための教育機関「学寮」がルーツです。 その龍谷大学の博物館が、西本願寺の向かいに建つ「龍谷ミュージアム」です。 仏教美術の蒐集と研究をされる博物館で、年に5回ほど展覧会が開かれ、いつもするどいテーマで仏教美術好きをうならせてくれる楽しみな博物館です。
アジアの女神たち 展
龍谷ミュージアムの秋の展覧会は「アジアの女神たち」と題して、仏教に出てくる女性姿の天部から、原始宗教的な世界の土偶まで、様々な国の様々な姿の女神が集められるようです。 チラシの表に「稀代の国宝」と書かれている、薬師寺の国宝『吉祥天像』の公開には驚きました。 昨年、あべのハルカスの「薬師寺展」で公開されるはずだったのが、新型コロナの流行でわずか4日間で終了してしまったので、見損ねた方も多いのではないでしょうか。 9/18~24の1週間だけなので、狙っている方はお見逃しなく。
今回はチラシの表裏にたくさん作品の写真が使われていて、見ているだけでもとても楽しいです。 土偶のふくよかさは、交流がないはずの地域でも共通ですが、後に豊かな時代になるとすっきり瘦せ型の女神も登場します。 同じ女神が土地によって表現がかわるのは、その国や時代の価値観が反映されているのでしょうが、こうやって見比べられる機会は意外と貴重です。
個人的に気になる作品は、長谷川等伯が描いた重文「 鬼子母神十羅刹女像 」や、兵庫県加古川市の「弁才天立像」でしょうか。 ガンダーラ仏で女神というのはあまり見かけない気がしますが、2~3世紀頃の「ハーリーティー倚坐像」は訶梨帝母なんだそうで、たしかに子供を抱いています。 これを書いている時点ではリストが公開されていませんが、WEBサイトを見ると、古代~インドから仏教への流れになっているようです。
この展覧会で観られる国宝
吉祥天像[薬師寺/奈良]
今回、開会から1週間だけ特別公開されるのが、奈良の薬師寺が所有する国宝絵画の『吉祥天像』です。 毎年お正月には、あちこちの寺院で「吉祥悔過」という法要が営まれますが、この画像は薬師寺の吉祥悔過の本尊です。 光明皇后の姿を写したといわれる、優雅な貴婦人風の吉祥天様です。
吉祥悔過は1/1~15の15日間で、この国宝絵画が薬師三尊像の前に掛けられるのは1/1~3のみ、1/4~15は模写が掛けられます。 お正月に現地に行けない方には、めったにないチャンスですよ。 それから、1/1~3の薬師寺でのご開帳はアクリルパネル?のようなものに入っていて、結構反射がきつくて角度によって見えづらい(そして混んでいる)ので、ゆっくり好環境で観られるのもいいですよね。
金光明最勝王経(百済豊虫願経)[西大寺/奈良]
前期(9/18~10/17)のみ 巻第7
奈良の西大寺に伝わる奈良時代の古写経で、巻末に「天平宝字六年二月八日百済豊虫願経」とあるので、天平宝字六年(762年)に百済豊虫が施主となって写経されたことがわかります。 女神の展示になぜ古写経?となりますが、金光明最勝王経には弁財天の功徳について書かれているのです。
西本願寺で観られる国宝
堀川通を挟んで広大な敷地を構える「西本願寺」には多くの国宝がありますが、日中なら誰でも無料で中に入れるお堂から、数年~数十年おきに博物館などで公開される絵画や書跡まであります。
西本願寺の門を入ると巨大なお堂が2つ並んでおり、左の国宝『御影堂』、右の国宝『阿弥陀堂』は渡り廊下でつながれていて、自由に内部参拝できるようになっています。
門から見て境内の左奥、御影堂の更に左にある建物の奥の通路を進むと、修復からお披露目されたばかりの国宝『唐門』を観ることができます。 更に、唐門までの道右手側には国宝『書院』があり、中には入れませんが屋根や玄関などを観ることができます。
それから、これは観えると言っていいか微妙ですが、御影堂の縁側から境内の東南角方面を眺めたり、龍谷ミュージアムの入口あたりから西本願寺の左端を見ると、非公開の国宝『飛雲閣』の屋根が見えますよ。
展覧会 概要
期間:2021/9/18~11/23
時間:10:00~17:00(入館は30分前まで)
休館:月曜日(9/20は開館し、9/21が休館)
料金:一般¥1,300、高大生¥900、小中生¥500
龍谷ミュージアム 公式サイト