竹生島(ちくぶしま)のこと
琵琶湖の北端近くに浮かぶ島で、琵琶湖では2番目に大きい島だそうです。 島は岩で出来ていますが、島全体が樹木に覆われて、遠くからだとマンガに出てくる島のようです。 1周2kmほどですが、崖が多くて港や寺社のある南側以外は立ち入ることができません。 聖武天皇の命で行基が宝厳寺を建立し、神仏習合の信仰の土地として、天皇の行幸もあったようです。
明治の神仏分離で、宝厳寺と都久夫須麻神社に別れていますが、当時の廃仏毀釈で宝厳寺は廃寺になりそうだったようです。 ですが、信者らの運動もあって寺は存続することになり、本堂は神社に譲り本堂がない状態が続きました。 現在の本堂は、昭和17年(1942年)に建てられたものです。
竹生島の国宝
竹生島には、『宝厳寺 唐門』と『都久夫須麻神社 本殿』の2つの国宝があり、どちらも豊臣秀頼によって豊臣家ゆかりの建築が移築されたものです。 豪華絢爛な桃山建築を観ることができます。
竹生島に伝わった装飾経の法華経が、国宝に指定され「竹生島経」の名前で呼ばれています。 宝厳寺と東京国立博物館に1点ずつ伝わり、宝厳寺所有のものは奈良国立博物館に寄託されているので、現地で観ることはできません。
宝厳寺 唐門
都久夫須麻神社 本殿
法華経序品(竹生島経)
法華経方便品(竹生島経)[東京国立博物館]
竹生島へのアクセス
東岸の長浜港、西岸の今津港からは「琵琶湖汽船」が運航しています。 今回利用した長浜港は、JR長浜駅から徒歩10分ほどで、駅周辺に飲食店なども多く便利です。 便数は季節によって異なり、冬場の平日は1日に2往復しかありませんが、週末や連休の時には1日10往復もあるようです。 長浜港の往復だけでなく、今津港→竹生島→長浜港のように、琵琶湖の横断もできるようです。
船の中は自由席で、こんな快適な座席です。 もちろんデッキにでることもできて、接岸時はみんなカメラを構えていました。 長浜港からは約30分の船旅で竹生島に到着します。 どの便も、80分前後の自由時間が設定されていますが、よほどゆっくりしない限り、この時間内でおさまると思います。 飲食などで時間がかかる場合は、帰りを遅い便に変更することもできるようです。
今津港往復 大人¥2,640、学生¥2,120、小学生¥1,320
長浜港往復 大人¥3,130、学生¥2,500、小学生¥1,570
琵琶湖横断 大人¥2,880、学生¥2,300、小学生¥1,440
※この料金は、2020年6月時点の料金です。
近江鉄道グループの「オーミマリン」は、近江港との往復です。 長浜港より南の彦根港は、彦根城から歩ける距離にあるので、遠くから観光に行かれる方は、このコースがいいかもしれません。 JRの米原から南は便数が多いので、電車でのアクセスもしやすいと思います。 料金は往復で大人¥3,000だそうです。
宝厳寺
関西エリアではおなじみの「聖武天皇の命によって行基が建立」のお寺ですが、こちらは聖武天皇の夢枕に天照大神が立ったというので、創建から神仏習合感が出ていますね。 中世は島全体が信仰の土地とされて、西国三十三か所の1つでもあります。
長い階段を上がると、大弁才天像をまつる本堂に出ます。 古いお堂に見えますが、戦時中の昭和17年(1942年)に建てられたものだそうです。 ご本尊は秘仏で、60年に1度しか公開されず、次回のご開帳は2037年だそうなので、見逃さないようにしないといけません。 ご朱印は、本堂のそばに納経所があります。
本堂からまた少し階段を上ると三重塔と宝物館があります。 三重塔は平成に入ってから再建されたもので、朱色が美しいこじんまりした塔です。 宝物館では残念ながら国宝の竹生島経は観られませんが、重要文化財をはじめ古い文化財をたくさん観ることができます。 たしか数百円払った気がしますが、この内容なら観ることをおすすめします。
来た道と別の西側の道を降りていくと、華やかな国宝『唐門』が現れます。 華やかなのも当たり前、2020年に長い修復工事が終わったばかりなのです。 2月はまだ完全に終わっていなくて、ベニヤ板で囲まれた部分もありましたが、6月のニュースでは美しい姿が観られるようになったそうです。 奥には観音堂が続いています。
この唐門は、伏見城の遺構説なんかもあって、豊臣ゆかりのどの建築かは諸説があったようですが、2006年にオーストリアで見つかった大阪絵図屏風に描かれていて、大阪城の「極楽橋」のものと断定されたようです。 この門から黒漆塗りの絢爛豪華な屋根付きの橋が、大阪城のお濠をわたっていたようです。
観音堂の本尊は千手観音で、西国三十三所の第三十番札所になっています。 観音さまをまつるお堂に多い、懸造りで建てられています。 観音堂を抜けると重要文化財(旧国宝)の舟廊下が続き、豊臣秀吉が朝鮮に出兵した時の御座船を改築したものだと伝わります。 観音堂と舟廊下は懸造りになっています。
都久夫須麻神社
舟廊下でつながっていますが、ここから都久夫須麻神社になります。 観音堂なども全て豊臣家の寄進で桃山建築なので、一体感があります。 本殿は正面から参拝するだけで、昇殿することはできません。 狩野永徳と光信父子によるという天井画があるそうですが、これも観られません。 幕で覆われているので、国宝として鑑賞するポイントが少ないのですが、唐門からの一連の流れは素晴らしいです。
本殿の向かいには竜神拝所があり、奥はバルコニーのようになっていて、琵琶湖が一望できます。 入場券を買うところで「かわらけ」を買うことができるのですが、それはここで使います。 素焼きの小皿2枚に願い事を書いて投げ、鳥居をくぐったら願いがかなうといいますが、これはかなりの難関です。 自分はもちろんダメで、周りの方のも見ていましたが、成功する方どころか惜しい方もいませんでした。 願い事はそのくらい叶いづらいものなのかもしれません。
これで寺社の参拝は終了です。 港に戻る途中では、さっき通った観音堂と舟廊下の下を通るので、見事な懸造りを間近で観ることができます。 清水寺よりも規模は小さいですが、柱が密でまた違った迫力があります。
ついでにグルメ
竹生島の港から数分の参道には、数件の土産物屋と軽食店が並んでいます。 実は、船が着くとみんなが一斉に同じコースを巡るので、とても混みあうんです。 帰りの船まで約80分間は、おそらく9割の方は少し時間が余るくらいだと思うので、ここは裏技的に先に小休憩をとることを提案します。
カフェ「ここや」さんはセルフのカフェなので、それほど待たずに飲食できます。 ちょっとお高めの「近江牛まん」¥500は軽食にちょうどいいです。 ドリンクセットだと¥800ですが、ほうじ茶オレなんかも頼めてお得気分。 こちらで10分ほど過ごしたおかげで、その後のルートは人が少なくて快適でした。
帰りは長浜港までまた30分。 湖なので揺れも少なく、でも船なので小旅行感は満喫出来て、とても素敵な国宝旅でした。