国宝『山水屏風』
屏風は貴族の邸宅の調度品として発達し、邸宅内で僧侶による祈祷が行われた時に用いられたことから、寺院での儀式でも使用されるようになる。 平安末期ごろからは、真言密教での「伝法灌頂」の儀式の調度品とされた。
平安末~鎌倉時代に作られたと考えられる六曲屏風で、山水の中にやまと絵で人物が配されている。 本品よりやや古い時代に作られた、旧東寺蔵で現在は京都国立博物館が所蔵する国宝『山水屏風』は、人物や風俗が唐風に描かれている。 過去の修理によって、扇(屏風の1枚ずつの単位)が入れ替わっていたが、2019年までの修理で元に戻された。
附指定「模本」冷泉為恭筆
江戸時代末期に京都で活躍した「冷泉 為恭(れいぜい ためちか)」による模本で、附として国宝に指定されている。 冷泉為恭は、京狩野派の家に生まれるが、やまと絵を志し古作の模写を重ね、後に蔵人所の岡田氏の養子になり、岡田為恭となった。 王朝文化に憧憬を持ち、生活様式などを平安風にしていたといわれ、貴族風の冷泉を名乗った。
この国宝を観るには
現品の屏風は、修理が終わった後の2019年秋に、泉屋博古館で開催された「文化財よ、永遠に」で公開された。 附の模本は、2019年までは神護寺の「虫払」で公開されていたが、2020年以降の虫払で現品が公開されるかは不明。
公開履歴
2024/8/14~9/8 東京国立博物館「神護寺-空海と真言密教のはじまり」
2023/10/11~11/5 東京国立博物館「やまと絵」
2019/9/6~10/14 泉屋博古館「文化財よ、永遠に」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-153
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00144-00
【種別】絵画
【指定名称】絹本著色山水屏風〈/六曲屏風〉
【ふりがな】けんぽんちゃくしょくせんずいびょうぶ
【員数】1隻
【時代・年】鎌倉時代
【附指定】絹本著色同模本〈/六曲屏風〉1隻
【所有者】神護寺
【国宝指定日】1967.06.15
【説明】山水屏風とは真言宗の秘法を伝える灌頂【かんぢよう】の儀式に調度的に用いられる屏風であるが、その名のごとく本図には全く宗教的内容はなく、自然の風物の中に寝殿造りの殿舎、柔【なえ】装束の貴公子などを配した平安時代の大和絵四尺屏風の伝統を伝えるものである。やや形式的なところがみられるので、鎌倉時代初頭ごろの作と推定されるが、大和絵屏風の唯一の遺品として尊ばれる。