狩野派~永徳の周辺~展
米沢市上杉博物館は、江戸時代を通じて上杉家が藩主をつとめた米沢藩の米沢城跡にあり、上杉家から寄贈された文書や美術工芸を所蔵しています。 その中に、狩野永徳が描いた国宝の洛中洛外図屏風があり、かつての所有者の名前から「上杉本」と呼ばれています。 この屏風は織田信長が上杉謙信に贈ったといわれるもので、2,500人もの人物と共に、京都の風景と風俗が描かれたものです。 上杉博物館では、春と秋の1ヶ月ずつだけ本物が展示されますが、残りの期間には複製が展示されます。
この秋は、洛中洛外図屏風の公開期間にあわせて、開館20周年特別展「狩野派~永徳の周辺~」が開かれます。 前後期が1ヶ月ずつあり、前期は「あこがれの世界へ」として、花鳥画や人物図など狩野派の始まりから永徳までの流れで、後期は「人々への視線」として、2つの洛中洛外図と風俗図などが展示されるようです。 前後期とも作品数は十点ちょっとと、それほど多いわけではありませんが、前期には1点、後期には3点の国宝が出展される内容の濃そうな展覧会です。
この展覧会で観られる国宝
檜図屏風 狩野永徳筆[東京国立博物館]
前期(8/7~9/5)のみ
チラシ表の上半分に使われている力強い檜の絵が、国宝の『檜図屏風』です。 現在は4曲1双の屏風になっていますが、元は八条宮邸の襖絵だったもので、金箔の背景に檜の大木から延びる若枝が生き生きと描かれています。
洛中洛外図屏風(上杉本) 狩野永徳筆
後期(9/11~10/10)のみ
この博物館を代表する所蔵品の洛中洛外図屏風です。 洛中洛外図は、描かれた建造物などからおおよその年代を推定でき、この作品は戦国時代の1561~1566年頃と予測されます。 同じ後期には、さら古い時代を描いた、歴博甲本と呼ばれる重要文化財の洛中洛外図屏風も展示されるので、見比べるのも楽しそうです。
観楓図 狩野秀賴筆[東京国立博物館]
後期(9/11~10/10)のみ
展覧会チラシ表の下半分に使われているのがこの屏風で、紅葉の名所だった京都の高尾の風俗を描いています。 狩野秀頼は2代目元信の次男または孫とされる絵師で、現存する作品はあまり多くありません。 武士や庶民が輪になって宴を楽しみ、神護寺に向かう僧侶の行列が通り、描かれた人物がとても生き生きとしています。
周茂叔愛蓮図 狩野正信筆[九州国立博物館]
後期(9/11~10/10)のみ
狩野派の始祖「狩野正信」の作品では唯一国宝に指定されたもので、周茂叔という人物が蓮池に舟を浮かべる姿を、水墨に淡い色彩を付けて描いたものです。 正信の作品は前期に2点公開され、テーマ的にも前期の方が近そうですが、足利将軍家の御用絵師で京都に住んでいた関係で後期に出るのでしょうか???
展覧会 概要
期間:2021/8/7~10/10
休館:8/25、9/6~10、9/22
時間:9:00~17:00(入館は30分前まで)
料金:一般¥800、高大生¥500、小中生¥300
米沢市上杉博物館 公式サイト