大阪市立東洋陶磁美術館名品選 展
戦中~戦後の10大商社の1つだった「安宅産業」には、中国・韓国を中心とした東洋の陶磁器の一大コレクションがありましたが、1980年に安宅産業が伊藤忠商事に吸収合併されると、そのコレクションはメインバンク住友銀行を含む住友グループから大阪市に寄付され、1982年には大阪市立東洋陶磁美術館が開館しました。 美術館は歴史的な建築が多く残る中之島にあって、安宅コレクションを中心とした常設展では時代や産地別に並べられて、東洋陶磁器を体系的に学ぶことができました。 中には自然採光室という太陽光による展示があったり、写真撮影もOKだったので、やや地味ながらも固定ファンの多い楽しい美術館でした。 2022年2月~2024年春頃まで改修工事のため長期休館に入っていて、その間は安宅コレクションを中心に、2022年秋には台湾、2023年春には東京の泉屋博古館、そして今回の九州国立博物館と、再オープンまで数か所を巡回しています。
九州国立博物館「大阪市立東洋陶磁美術館名品選展」チラシより
プロローグ 大阪市立東洋陶磁美術館を創ったコレクション
第1章 東洋陶磁礼賛-名品で辿る東洋陶磁の歴史-
第2章 日本文化となった東洋陶磁
特設コーナー 国内現存の汝窯陶磁
この展覧会で観られる国宝
油滴天目茶碗[大阪市立東洋陶磁美術館]
貴重な茶碗としてよく話題にあがる曜変天目の仲間で、細かい滴模様が内外の全面にあるので「油滴天目(ゆてきてんもく)」と呼ばれています。 時代によっては、油滴天目も曜変天目とされていたようで、同じように珍重されてきました。 口の金色部分は金属で、装飾のためとか破損を防ぐためですが、黒い茶碗に金が効いて、とてもモダンな印象の茶碗です。 九州国立博物館には、名品として並び称された重要文化財の油滴天目茶碗があり、この展覧会では2椀が並べられるようです。
飛青磁花生[大阪市立東洋陶磁美術館]
薄いブルーやグリーンの青磁(せいじ)は、11世紀頃から盛んになり、14世紀の龍泉窯の名品が日本にもたくさん入っています。 国宝の青磁は3点あり全て花生(花入)といわれる花瓶で、中国ではお酒などを入れるために作られたようです。
この花生は、ところどころに鉄分による黒い模様が入り、釉薬は光沢があります。 東京展の時には独立ケースに入れられていて、周囲ぐるっと360度から鑑賞できましたので、模様の細かな違いを観るのが楽しかったです。
青磁は色味や光沢など、時代や窯によって様々で、今回は青磁の名品がたくさん並びますので、見比べてみてください。
秋景冬景山水図[金地院/京都]
前期(7/11~8/6)
中国の山水画の形式で、春夏秋冬それぞれの風景を描く四季山水図だったと考えられていて、京都の南禅寺の塔頭「金地院」には秋と冬の2幅の掛軸が伝わっています。 山梨県にある久遠寺には夏の掛軸があり、これも国宝に指定されていますが、残念ながら春は不明なようです。 書画を得意として風流に興じ、やがて北宋が滅んでしまったという徽宗皇帝の作だという伝承があります。
中国では皇帝らの有力者が、自分が蒐集や鑑賞した証として余白等に印鑑を押す「鑑蔵印」という習慣があり、その影響で室町の足利将軍家などは鑑蔵印を押していたようで、足利将軍家の旧蔵品は「東山御物」と呼ばれます。 この作品は、足利義満の鑑蔵印(蒐集を示す印)の「天山」が押されていて、室町将軍家の御殿の床飾りを再現する展示を構成するようです。
九州国立博物館「大阪市立東洋陶磁美術館名品選展」チラシより
展覧会 概要
日程:2023/7/11~9/3
休館:月曜日、7/18(7/17と8/14は開館)
時間:9:30~17:00(入館は30分前まで)
夜間:金土は20:00閉館(入館は30分前まで)
料金:一般¥1,700、高大生¥1,300、小中生¥900
九州国立博物館 公式サイト