特別展「京都・南山城の仏像」
京都府南部の奈良県と接しているエリア、木津川市や京田辺市、和束町や南山城村あたりが「南山城」と呼ばれていて、古くは奈良仏教文化圏の北端、京都に都が遷ってからは新都と旧都を結ぶ位置として、数多くの寺院が建立されました。 京都や奈良では戦乱に巻き込まれた寺院が多いですが、南山城あたりは難を逃れた寺院も多く、数多くの堂宇や仏像が現在まで伝わっています。 特に浄瑠璃寺は平安時代に流行した九体阿弥陀像と九体阿弥陀堂の両方が残る唯一の寺院で、今回の展覧会は九体阿弥陀像の修理が終わったことを記念した展覧会です。
夏に開催された奈良会場よりも規模は小さく、タイトルも奈良は「京都・南山城」でしたが今回は「京都・南山城の仏像」となっていて、平安~鎌倉時代の仏像18躯(一部展示替えあり)が公開されます。 特別展ですが会場は本館正面にある階段奥の特別5室で開かれます。
東京国立博物館「京都・南山城の仏像」チラシより
この展覧会で観られる国宝
東京国立博物館「京都・南山城の仏像」チラシより
阿弥陀如来坐像(九体阿弥陀)[浄瑠璃寺/京都]
今回の主役と言ってもいい浄瑠璃寺の国宝『九体阿弥陀』から1躯の阿弥陀如来坐像が出ています。 阿弥陀様の極楽浄土では、生前の行いによって上品上生から下品下生までの9つのランクに分かれ、お迎えの人数から乗り物、浄土での過ごし方まで差があって、その9つのランクごとの阿弥陀様として作られたのが九体阿弥陀です。 仏像の手の形「印」によっては、上品上生から下品下生まで異なる印を結ぶ像もありますが、浄瑠璃寺では中央の大きな像を除き、上品上生の阿弥陀定印を結んでいます。 奈良会場では「その1」と「その8」の2躯が出展されましたが、今回の1躯は出品リストにどの阿弥陀様かの記載がありませんでした。
四天王立像[浄瑠璃寺/京都]
浄瑠璃寺の四天王立像4躯の内、現地には持国天と増長天が安置され、広目天と多聞天は国立博物館に寄託されています。 東京国立博物館の通常展にも時々お目見えする広目天は、予想通りこの展覧会へも出展されました。 展覧会が始まって出展リストを見たら、京都国立博物館に寄託されている(はず)の多聞天も公開されるようです。 京都からの出張でしょうか?
浄瑠璃寺の四天王像は、平安時代らしく穏やかで品が良いのですが、何かぐわっとした迫力がある美仏です。 浄瑠璃寺では外陣側の両角に安置されていて比較的近くで拝観できますが、堂内が暗いので今回のように明るい場所で観られるのは嬉しいですね。 国宝『阿弥陀如来坐像』の両側に、脇侍のように配置されているようです。
展覧会 概要
日程:2023/9/16~11/12
時間:9:30~17:00
休館:毎月曜日(9/18と10/9は開館し、9/19と10/10は休館)
料金:一般¥1,500、大学生¥800、高校生¥500
京都・南山城の仏像 展 特設ページ
東京国立博物館 公式サイト
国宝の観られる南山城のお寺
南山城には国宝の建造物や仏像がいくつかあり、観光客でごった返す京都と奈良の中間にありながら、観光客が少ない穴場スポットです。 これからの紅葉シーズンに関西に行かれる方は、この辺りを候補にしてはいかがでしょうか。 以下は奈良会場のWEBページを作った時にまとめた記事です。
浄瑠璃寺(九体寺)[木津川市]
国宝の『本堂』に9躯の国宝本尊『阿弥陀如来坐像』(内2躯は南山城展に出展)と国宝『四天王立像』の内2躯(他の2躯は東博と京博に寄託)が安置されていて、池を挟んだ向かいには国宝『三重塔』がある浄土式のお寺です。 池の周囲をぐるりと歩いたり、参道には茶店や土産物屋があって、静かな山里を満喫できます。
海住山寺 [木津川]
木津川市の古刹で、山の中腹にあるので徒歩だとかなりキツイ坂を上ることになります。 南山城展には国宝『五重塔』の扉絵が出展されていて、現地では五重塔を観ることができます。 このお寺では秋に寺宝展が開かれるほど多くの寺宝が伝わっていて、南山城展でかなりの数を観ることができます。
海住山寺から南に2kmほどの所には、聖武天皇によって遷都された恭仁京跡(完成を待たずに紫香楽宮に遷都)と山城の国分寺跡が史跡になっているので、歴史好きの方はこちらも訪れてみてください。
蟹満寺[木津川市]
三上山の海住山寺とは反対側の麓にある蟹満寺は、名前の通り蟹に関係する伝説の残るお寺で、飛鳥~奈良時代頃に作られた国宝本尊『釈迦如来坐像』が残っています。 高さ2.4mもある銅像仏で、調査によって作られたころから移動されていないことが分かっているようで、1,300もこの南山城の地にいらっしゃることになります。 静かなお寺ですので、本堂に座って釈迦如来像とゆっくり向き合うことができます。
観音寺[京田辺市]
同志社大学の京田辺キャンパス近くの田園の中にポツンとあるお寺ですが、かつては堂宇の立ち並ぶ大規模の寺院だったようです。 こちらの国宝本尊『十一面観音立像』は、聖林寺の国宝『十一面観音立像』との共通点が多く、官営か都の有力な工房で作られた兄弟仏だと考えられているのだそうです。 本堂の手前にある寺務所にお声がけをしたら、ご住職が中で説明をしてくださいました。
東京国立博物館で観られる国宝
東京国立博物館は、いつも何かしらの国宝に逢うことができます。 特別展の入館券で当日は本館・東洋館・平成館1階・法隆寺宝物館の4館に入場できますので、月ごとのカレンダーをチェックしてお見逃しのないようにお楽しみください。