鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム
鎌倉の中心地的存在の鶴岡八幡宮には、参道の左右に2つのミュージアムがあります。 鳥居をくぐって本殿を正面に見た時に、右には鎌倉市の運営する「鎌倉国宝館」が、左には「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」があります。 鎌倉を何度か訪れた方は、アレ?と思うかもしれません。 そうです、以前は神奈川県立近代美術館の鎌倉館と呼ばれていたんです。 2016年に県立美術館としての活動は終了して、土地が鶴岡八幡宮に返還されるのと一緒に、ル・コルビジュエの弟子「坂倉準三」氏設計の建物が無償譲渡されたのだそうです。 2019年にはリニューアルを経て「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」と命名され、美術館と宝物館と資料館をあわせたような施設として、幅の広い企画展が展開されています。
鶴岡八幡宮の名刀-歴史に宿る武士の信仰-
このミュージアムが開館してまだ2年ちょっと、しかもその大半がコロナ禍ということで、今回の展覧会が初の大規模な社宝展になるようです。 鶴岡八幡宮は本殿の左奥に「宝物殿」があって、拝観料が¥200ととても気楽に観られますが、文化財指定されたようなものは展示されておらず、年に1度の鎌倉国宝館での企画展を楽しみにしていたものでした。
過去の展覧会を見ると入場料が¥300~500ほどなのに、今回は¥1,300とちょっと強気な設定です。 それだけ鶴岡八幡宮が本気を出しているということで、八幡宮に伝わる由緒ある奉納品の名刀がずらりと揃っているんです。 国宝6点と重要文化財12点をはじめとする名刀が一堂に揃うのは、41年前の創建800年記念で公開されて以来なんだそうです。 純粋に刀剣が好きな方はもちろん、時々の有力者が奉納した歴史ある神宝が多いので、歴史好きな方にもオススメな展覧会です。
この展覧会で観られる国宝
チラシの表にも「国宝6点」と書かれていますが、文化財の指定としては2件で、単独で国宝に指定された「正恒」作の太刀が1つと、その「附」として指定された太刀の「拵」が2つめで、これで1件の国宝指定です。 残りの4点は、鶴岡八幡に奉納された武具類がまとめて1件の国宝指定をされている「古神宝類」から、太刀が2つと太刀1つ、平胡籙という矢を収める武具が1つが公開されます。
太刀 銘 正恒・拵[鶴岡八幡宮]
正恒と名乗る刀工は何名かいて、これは備中青江派の正恒が鎌倉時代に作った太刀です。 とてもおっとりと品の良い太刀で、個人的にはとても好みの太刀です。 徳川8代将軍の吉宗が、社殿を修復した時に奉納したものだそうで、チラシの表に使われている菊蒔絵の糸巻拵も一緒に公開されています。
古神宝類[鶴岡八幡宮]
同じ境内の中にある市立の鎌倉国宝館でも「国宝 鶴岡八幡宮古神宝」展が開かれていて、そちらでも弓矢やもう1点の平胡籙が公開されています。 一括で国宝に指定された古神宝には、無銘の2口の太刀が含まれますが、これは源頼朝が佩刀したものなんだそうです。 杏の葉をモチーフにした拵もあって、武家らしい風格を感じます。
・沃懸地杏葉螺鈿太刀(無銘 甲)
・沃懸地杏葉螺鈿太刀(無銘 乙)
・乙の太刀の拵
・沃懸地杏葉螺鈿平胡籙
この展覧会で観られる国宝の複製
赤絲威鎧(菊一文字の鎧兜)[櫛引八幡宮/青森]
ひときわ立派で華やかな大鎧は、青森の櫛引八幡宮に伝わる「赤絲威鎧」で、袖などに枝折菊に漢数字の「一」の金物があるので「菊一文字の鎧兜」と呼ばれる名品の複製です。 本物は櫛引八幡宮の国宝館で公開されているので、関東ではなかなかお目にかかれない、古い時代の華やかな大鎧です。
古神宝類[鶴岡八幡宮]
国宝の弓矢の現物は、鎌倉国宝館の方で展示されていて、こちらは複製が展示されています。 色々な意見はあるでしょうが私はこの複製の展示が好きで、作られた当時の華やかさはやっぱりキレイなんですよ。 複製の美しさを目に焼き付けて、本物の国宝を観て往時を偲ぶのがいいんですよね。
・朱漆弓
・黒漆矢
籬菊螺鈿蒔絵手箱
これは厳密には国宝ではないのですが、鎌倉国宝館で公開中の国宝『籬菊螺鈿蒔絵硯箱』と揃いだったもので、北条政子の愛用品だった手箱です。 なぜ硯箱が国宝で手箱が国宝ではないかというと、手箱がウィーン万国博覧会で公開され、帰国する明治7年(1874年)に伊豆沖で船が難破して海の底に沈んでしまったんです。 手箱の内容品だという化粧道具は、硯箱と一緒に国宝館で公開中なので、現在の姿もぜひ観てみてください。
展覧会 概要
期間:2021/9/1~12/5
時間:10:00~16:30(入館は30分前まで)
休館:月曜日(祝日の場合は開館し、翌日が休館)
料金:一般¥1,300、小中学生¥600
鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム 公式サイト