※4/25~休館で、会期の延長はせず4/24で終了
春の優品展「古筆を知る」
五島美術館は、東急の創業者である五島慶太氏のコレクションを元に、五島家の邸宅の一部に作られた美術館で、古写経や茶道具などを中心に、国宝8件(内3件は大東急記念文庫)を含む日本美術を所蔵しています。 特に人気のある国宝『源氏物語絵巻』と『紫式部日記』は、それぞれ春と秋の2週間ほど公開されますが、今回は「春の優品展」として、源氏物語絵巻を含む古筆の名品を集めた展覧会になるようです。
日本の古い書跡というと、堂々とした楷書で書かれた奈良時代の写経や平安時代の華やかな装飾経、平安~鎌倉時代にくずした仮名で書かれた和歌などがあります。 千利休の侘茶が流行すると、茶席にかけるのはそれまでの中国絵画から、古筆を切った「断簡」を軸層にしたものに変わっていきます。 また、古い書を数行ずつ貼り集めた名筆のスクラップブック「手鑑(てかがみ)」も流行して、来歴などから取った「〇〇切」と呼ばれて、コレクションの対象になっていきます。 今回は、平安時代を中心に五島美術館が所蔵する古筆の名品が、一堂に並べられるようです。
この展覧会で観られる国宝
※4/25~休館で、会期の延長はせず4/24で終了
国宝『源氏物語絵巻』4/29~5/9のみ
現存最古の源氏絵で、五島美術館が所蔵するのは蜂須賀家が旧蔵していた絵4面と詞書9面です。 毎年GWの公開は恒例になっていて、鈴虫1・鈴虫2・夕霧・御法の全てを観ることができます。 こ例外の期間は、制作当時の復元模写や現状模写が交代で展示されるようです。
国宝の断簡が多数観られます
古写経や和歌集など、元は巻物だったものが、長い時代の中で切り取られ「断簡」になることはよくありました。 名筆集の「手鑑」は、聖武天皇が書いたという伝承があった賢愚経の「大聖武」で始まるのが格が高いとされていて、名家に伝わる手鑑は大聖武が貼られています。 巻物として現存する大聖武は、前田家旧蔵品3巻、東大寺に1巻、白鶴美術館に残簡が2巻、東京国立博物館にある残簡の4件で、あまり公開されません。 今回、国宝に指定された書跡類の断簡が多く出るので、昔は国宝の一部だったものをチェックしてみましょう。
重要文化財「高野切 古今集(第1種)」紀貫之筆
秀吉から高野山の僧「木喰応其」に伝わったため「高野切」と通称される、古今和歌集の現存最古の写本です。 作者は3名と推測されていて、この第1種は山内家旧蔵品で現在は高知県が所有する『古今和歌集巻第廿』と同じ作者と考えられています。
石山切(伊勢集)
三十六歌仙を1人1冊の歌集にした国宝『三十六人家集』は、元は蓮華王院の宝蔵にあったもので、明治時代に西本願寺の庫裏から発見されました。 昭和初期に「貫之集」と「伊勢集」が分割して売り出され、各所にある断簡は「石山切」と呼ばれます。
重要文化財「熊野懐紙」後鳥羽天皇筆
平安末~鎌倉時代に貴人の間で「熊野詣」が流行しますが、後鳥羽上皇は特に熱心で、生涯で30回近く熊野詣を行いました。 熊野懐紙は、途上で歌会を催したときに和歌を書きつけたもので、陽明文庫の『熊野懐紙』3幅と、西本願寺の『熊野懐紙』1巻が国宝に指定されています。
賢愚経断簡(大聖武)
この項目の最初に書いた、伝承筆者が聖武天皇の「大聖武」です。 東大寺の『賢愚経 巻第15』、前田育徳会の『賢愚経残巻3巻』、東京国立博物館の『賢愚経 残巻』、白鶴美術館の『賢愚経 残巻』が国宝に指定されています。
重要文化財「法華経(久能寺経)」
鳥羽天皇と皇后の待賢門院を中心に、30名が1巻ずつを受け持って写経した装飾経で、五島美術館が所蔵する2巻が前後期で公開されます。 個人蔵の『久能寺経』4巻と、旧久能寺の鉄舟寺所蔵の『久能寺経』19巻が国宝に指定されています。
展覧会 概要
※4/25~休館で、会期の延長はせず4/24で終了
期間:2021/4/3~5/9
休館:月曜日(5/3は開館し、5/6が休館)
時間:10:00~17:00(入館は30分前まで)
料金:一般¥1,000、大高生¥700、中学生以下無料
五島美術館 公式サイト