国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ 展
元は2020年に予定されていた特別展でしたが、新型コロナの流行で1年延期になり、2021年の夏に東京国立博物館で開かれた展覧会が、地元の奈良に戻ってきました。 美仏として有名な今回の主役、聖林寺の国宝『十一面観音立像』は、聖林寺の本堂の縁側から階段を登ったところに建つ収蔵庫に安置されていました。 収蔵庫の老朽化のため、聖林寺山ではクラファンなどで費用を工面して改修工事を進めておられるようで、その間に東京と奈良市内にお出ましになられるという訳です。
この十一面観音像は元から聖林寺にあったものではなく、明治期に廃仏毀釈で廃寺になってしまった大神神社の神宮寺「大御輪寺」のものでした。 東京に続いて今回も、大御輪寺に旧蔵されていた仏像が集められ、OB会の様相を呈しています。 大神神社は日本最古の神社ともいわれるほどの歴史があり、境内からは古代祭祀に使われた祭具などが出土しています。 仏像の他にも、三輪山にまつわる様々な信仰が紹介される展覧会です。
大神神社と大御輪寺のこと
大神神社(おおみわじんじゃ)は、大物主大神(おおものぬしのおおかみ)を三輪山に祀ったことが、古事記や日本書紀にも書かれる日本最古の神社です。 三輪山自体が御神体で、禁足地として信仰の対象としており、その山裾に拝礼のための大神神社があります。
大御輪寺(だいごりんじ、おおみわてら)は大神神社の神宮寺で、中世には本地垂迹説や神仏習合が進み、三輪流神道が広められました。 大御輪寺・浄願寺・平等寺といった大神神社の神宮寺は全て廃寺になっていますが、大物主大神の子孫神「大直禰子命」を祀る大直禰子神社は、大御輪寺の本堂が使われているそうです。
神域である三輪山は、現在は入山参拝が許されていますが、長く禁足地とされてきました。 三輪山からは、古墳時代(4~5世紀)に祭祀を行った遺跡群が見つかっており、その中心的な「山ノ神遺跡」の出土品なども出展されるようです。
この展覧会で観られる国宝
十一面観音立像[聖林寺]
奈良時代の木心乾漆仏で、京田辺市にある観音寺(普賢寺)大御堂の国宝『十一面観音立像』と同じ官営の工房で作られたと考えられています。 聖林寺の収蔵庫では、ガラス越しに正面から参拝する形だったので、正面と斜め前からしか観ることができませんでしたが、東京での展示はある程度の高さまでガラス板はありましたが、360度からじっくりと眺めることができました。 奈良ではどのように展示されるのでしょうか?
地蔵菩薩立像[法隆寺]
この地蔵菩薩は大御輪寺にあった頃は十一面観音の脇侍だったそうで、約150年ぶりの再会ということになるでしょうか。 カヤの一木造りの像は、十一面観音より時代が下がる平安時代のもので、平安初期らしいどっしりとした風格のあるお地蔵様です。 他にも旧大御輪寺の仏像では、奈良と天理の市境にある「正暦寺」の日光・月光菩薩もお出ましになります。
展覧会 概要
期間:2022/2/5~3/27
時間:9:30~17:00(入館は30分前まで)
休館:2/7(月)・21(月)・28(月)・3/22(火)
料金:一般¥1,400、高大生¥1,000、小中生¥500
奈良国立博物館 公式サイト