国宝『聖徳太子絵伝』秦致真筆
平安時代の延久元年(1069年)に、法隆寺東院の『伝法堂』と『夢殿』の間にある「絵殿」の壁面に描かれた障壁画で、聖徳太子の事績が描かれている。 江戸時代に2曲5隻の屏風になったものが明治時代に皇室に献納され、東京国立博物館蔵となってから10面の額装にされた。
作者は、古い法隆寺の資料によって「秦致真」とされ、国宝の指定データの作者も「秦致真」となっているが、法隆寺蔵の『聖徳太子童形坐像』の彩色を「秦致貞」が行ったとする墨書が胎内から出たため、現在では「秦致貞」とする説が有力。
人物の服装は、貴人の男性は衣冠束帯、女性は十二単とも呼ばれる女房装束、子供時代の太子はみずらに結った髪型など、描かれた時代(平安中期)の姿をしている。 また、貴人の住まいは寝殿造りで「吹抜屋台」という屋根を描かずに中の様子を見せる技法が用いられている。
現存する聖徳太子絵伝としては最古級のもので、大画面10面に山水や御殿を配置し、その中に聖徳太子の60近くの事績が配置されている。 聖徳太子の生い立ちから政治活動が描かれる飛鳥の地や、寺院建立に関係する斑鳩や難波の他、聖徳太子の前世として中国を描く場面もある。
聖徳太子信仰
日本への伝来時期に仏教を手厚く保護し、法隆寺や四天王寺を建立した聖徳太子は、奈良時代ごろから信仰の対象となった。 日本書紀にはすでに偉業の記載があり、平安期には伝記や絵伝などが成立する。 聖徳太子像をまつる寺や、その像を安置する太子堂などが各地にでき、宗派を超えて信仰されている。
この国宝を観るには
法隆寺献納物の1品ではあるが、常時展示されておらず、期間を定めて公開される。
公開履歴
2023/10/11~12/3 東京国立博物館「やまと絵」
2022/10/18~12/18 東京国立博物館 150周年「国宝 東京国立博物館のすべて」
2021/4/27~6/20 奈良国立博物館「聖徳太子と法隆寺」
2019/10/29~11/24 東京国立博物館 法隆寺宝物館
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-147
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00141-00
【種別】絵画
【指定名称】綾本著色聖徳太子絵伝(絵殿旧障子絵)〈秦致真筆/(法隆寺献納)〉
【ふりがな】りょうほんちゃくしょくしょうとくたいしえでん
【員数】10面
【国】日本
【時代・年】1069年
【作者】秦致真
【所在地】東京国立博物館
【国宝指定日】1965.05.29
【説明】法隆寺東院絵殿【えどの】の障子絵として秦致真【はたちしん】によって平安時代の延久元年(一〇六九)に描かれたもの。江戸時代に屏風に改装され、明治年間皇室に献納されたいわゆる法降寺献納旧御物の一つである。各隻とも、ほとんど画面一ばいに山水、樹木、宮殿、寺社等を配し、その間に聖徳太子の諸事跡を描く。太子絵伝では現存中最も古く、また遺作の少ない平安時代大和絵の貴重な作品でもある。