正宗十哲-名刀匠正宗とその弟子たち 展
今年の新年早々から、東京にある刀剣博物館で開催された展覧会の巡回でしょうか? 展覧会のタイトルが同じで、主催はそれぞれの館と日経新聞になっています。 ふくやま美術館は一時期、国宝や重要文化財の刀剣を期間ごとに数口ずつ公開していましたが、一昨年あたりから刀剣をテーマにした展覧会で複数の国宝刀剣を公開しています。 近くだとちょいちょい行けますが、遠征となると複数まとめて公開していただける方がありがたいです。
タイトルの「正宗十哲」というのは、鎌倉時代に相模国(現在の神奈川県)で活躍した名工「正宗」の弟子や、正宗から強く影響を受けた刀工ら10名のことです。 その10名にも諸説ありますが、今回の展覧会では貞宗は正統な後継者として十哲には入れておらず、来国次、長谷部国重、志津三郎兼氏、金重、江(郷)義弘、則重、石州直綱、長船兼光、長船長義、左文字の10名になっています。 正宗十哲という言葉はよく聞きますが、十哲に絞った展覧会は今回が初めてなんだそうです。 十哲だけでなく、正宗の師や正宗自身による刀剣も公開されるので、比較的初心者向けの展覧会だと思います。
ふくやま美術館には7口の国宝刀剣があって、その内4口が東京・福山の両方で公開されています。 東京で公開された国宝刀剣9口の内、山口県柏原美術館の国宝『刀(名物 稲葉江)』、サントリー美術館で公開されている文化庁の国宝『短刀 無銘貞宗(名物 寺沢貞宗)』、細川家伝来で永青文庫所蔵の国宝『短刀 銘 則重(日本一則重)』は福山では公開されませんが、永青文庫のもう1つの国宝『短刀 無銘正宗(名物 庖丁正宗)』が福山に登場します。
この展覧会で観られる国宝
※このページの国宝写真は別の展覧会で撮影しましたが、今回は一部の作品が撮影OKのようです。
第1章 正宗の先人達
国宝『太刀 銘 国宗』[ふくやま美術館]
国宗は備前の刀工で、鎌倉幕府に招かれて正宗の師といわれる国光へ作刀を教えたのだそうで、4口の太刀が国宝に指定されています。 とても華やかな太刀でした。
国宝『短刀 銘 国光(名物会津新藤五)』[ふくやま美術館]
正宗の師といわれる国光の作で、会津藩主だった蒲生氏郷が所有したので「会津新藤五」の名物号があり、前田家を経て徳川将軍家に伝わったようです。
第2章 相州伝の完成者 -正宗出現-
国宝『短刀 無銘 正宗(九鬼正宗)』[林原美術館/岡山]
小早川隆景が舞の褒美として九鬼守隆の弟へ与えますが、後に関が原で西軍について自害すると、東軍についた兄の所有となったという短刀です。
国宝『短刀 無銘正宗(名物 庖丁正宗)』[永青文庫/東京]
正宗の短刀には、幅が広く包丁(庖丁)のように見えるので「庖丁正宗」と呼ばれる短刀が3口あります。 戦国時代の武将で外交僧としても活躍した「安国寺恵瓊」が所有していたもので、関ヶ原の後に恵瓊をとらえた奥平信昌が恵瓊と一緒に家康に引き渡すと、この短刀は褒美として奥平信昌に与えられました。
第3章 相州伝の波及 -正宗十哲-
国宝『短刀 銘 来国次』[個人蔵]
正宗十哲の1人「来国次」による短刀で、紀州徳川家に伝来しました。 国宝は短刀として指定されていますが、今回の展覧会では脇差となっています。
国宝『太刀 銘 筑州住左(江雪左文字)』[ふくやま美術館]
左文字派初代の左衛門三郎(通称:大左、法名:源慶)による太刀です。 短刀が多い左文字には珍しい在銘の太刀で、後北条の家臣だった板部岡江雪斎が所有したので「江雪左文字」の名物号があります。
国宝『短刀 銘 左筑州住(太閤左文字)』[ふくやま美術館]
こちらも佐文字派初代の源慶による短刀で、太閤左文字の名物号の他に「じゅらく」とも呼ばれています。 名前の通り太閤秀吉が所有したもので、秀吉から徳川家康に贈られました。
第4章 正系継承者 貞宗
福山美術館では、この章には国宝は登場しませんが、重要文化財に指定された2口の名物刀剣が公開されるようです。
展覧会 概要
日程:2024/2/18~3/27
休館:月曜日
時間:9:30~17:00()
料金:一般¥1,000、高校生以下無料
福山市で観られる国宝
このエリアは、鎌倉~室町時代に草戸稲荷神社と明王院の門前町「草戸千軒町」として発展し、貿易の主要地として栄えましたが、度重なる洪水で水没してしまいました。 ふくやま美術館の近所にある草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)には出土品などが展示され、芦田川に近い愛宕山の中腹にある「明王院」は当時の遺構が残っています。 ふくやま美術館からは徒歩だと30~40分ほど、福山駅でバスに乗って「神島橋西詰バス停」から徒歩15分の間には、朱塗りの懸崖造が大迫力の草戸稲荷神社もあります。
国宝『明王院 本堂』
元応3年(1321年)に建立された国宝の本堂は、日本独特の建築様式「和様」に、当時日本に伝わって間もない「大仏様」「禅宗様」の特徴が取り入れられた「折衷様」で建てられています。 中に入ることはできず、外からお参りします。
国宝『明王院 五重塔』
本堂よりやや遅い貞和4年(1348年)に建立された国宝『五重塔』は、頼秀という僧が一文勧進の少資を積んで建てられたもので、1文を現代の価値にすると数十円ほどと庶民でも喜捨できる金額だったようです。 最近は文化財の修復でクラウドファンディングをする寺社が増えましたが、大昔から同じような仕組みで守られてきたんですね。
こちらも中に入ることはできず、開扉もされていませんが、国宝の本堂と五重塔が並ぶ姿は圧巻です。
ついでにグルメ
ふくやま美術館は福山城公園の一角にあり、公園内には福山城や草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)、護国神社など、たくさんの施設があります。 お城の北にある福寿会館は、海産物商で財を成した安部和助氏の邸宅跡で、洋館が「Maison Anbe(メゾン アンベ)」としてカフェ営業されています。 窓からは手入れされた庭や福山城が見えて、建物にぴったりと似合うチーズプリンや、地元食材のレモンや生姜を使ったドリンクがいただけます。 16時閉店なので、スケジュールにはご注意ください。