刀剣博物館「正宗十哲-名刀匠正宗とその弟子たち」
日本美術刀剣保存協会の付属施設である刀剣博物館では、年に6回ほどの展覧会が開かれ、文化財に指定された古い刀剣から現代の刀工による刀剣、附属品や刀剣に関連する資料などが展示されます。 新春の展覧会は刀剣博物館と日経新聞が主催の特別展で、名工の相州正宗とその弟子たちをテーマにした「正宗十哲」が開かれ、2月中旬からはこの展覧会に4口の刀剣を出展している ふくやま美術館 に巡回するようです。
正宗十哲と聞くと、正宗の優れた弟子10人かと思っていたのですが、直接の弟子だけでなく、正宗に強い影響を受けた刀工も含まれるようです。 その10名にも諸説ありますが、今回の展覧会では貞宗は正統な後継者として十哲には入れておらず、来国次、長谷部国重、志津三郎兼氏、金重、江(郷)義弘、則重、石州直綱、長船兼光、長船長義、左文字の10名になっていました。 十哲について1人ごとに特色が解説され、それぞれ1~4口の刀剣が展示されていて、とても分かりやすい展示です。 十哲だけでなく、正宗本人のものや、正宗の師や正宗に影響を与えた先人たちの刀剣も並びますので、正宗前後の流れを俯瞰することができます。
この特別展では、9口の国宝、7口の重要文化財をはじめ、重要美術品や重要刀剣など、貴重なラインナップで、しかも個人所蔵の刀剣がかなりの数出ています。 博物館所蔵の刀剣は定期的に公開されるものもありますが、個人所蔵のものは次に何時会えるかわかりません。 これだけの刀剣が並んでいるのに、半数以上の刀剣が写真撮影OKというのも驚きです。 国宝ではふくやま美術館の4口と、個人蔵の来国次が写真撮影OKになっています。
この展覧会で観られる国宝
正宗の先人達
国宝『太刀 銘 国宗』[ふくやま美術館/広島]
国宗は備前の刀工で、鎌倉幕府に招かれて正宗の師といわれる国光へ作刀を教えたのだそうで、4口の太刀が国宝に指定されています。 とても華やかな太刀でした。
国宝『短刀 銘 国光(名物会津新藤五)』[ふくやま美術館/広島]
正宗の師といわれる国光の作で、会津藩主だった蒲生氏郷が所有したので「会津新藤五」の名物号があり、前田家を経て徳川将軍家に伝わったようです。
相州伝の完成者 -正宗出現-
国宝『短刀 無銘 正宗(九鬼正宗)』[林原美術館/岡山]
小早川隆景が舞の褒美として九鬼守隆の弟へ与えますが、後に関が原で西軍について自害すると、東軍についた兄の所有となったという短刀です。
相州伝の波及 -正宗十哲-
来国次
1/6~1/24
国宝『短刀 銘 来国次』[個人蔵]
紀州徳川家に伝来したもので、国宝は短刀として指定されていますが、今回の展覧会では脇差となっていました。
江(郷)義弘
国宝『刀(名物 稲葉江)』[柏原美術館/山口]
「郷とお化けは見たことがない」と言われるほど珍しかったということですが、銘が入っていなかった為のようで、本阿弥家が鑑定して金象嵌銘が入っています。
則重
国宝『短刀 銘 則重(日本一則重)』[永青文庫/東京]
正宗の兄弟弟子だったという説もある則重は、越中国(現在の福井県)で活躍しました。 日本一という号がつくほどの名刀です。
左文字
国宝『太刀 銘 筑州住左(江雪左文字)』[ふくやま美術館/広島]
短刀が多い左文字には珍しい在銘の太刀で、後北条の家臣だった板部岡江雪斎が所有したので「江雪左文字」の名物号があります。
国宝『短刀 銘 左筑州住(太閤左文字)』[ふくやま美術館/広島]
太閤左文字の名物号の他に「じゅらく」とも呼ばれるこの短刀はもちろん太閤秀吉が所有したからで、秀吉から徳川家康に贈られました。
正系継承者 貞宗
1/6~1/21
国宝『短刀 無銘貞宗(名物 寺沢貞宗)』[文化庁]
正宗の実子または養子といわれる貞宗は、正宗十哲に数えられる場合もありますが、今回は正宗の正統な後継者として外されていました。 織田有楽斎が所有した時期があり、この展覧会の後2/28~3/24にはサントリー美術館で公開されるようです。
展覧会 概要
日程:2024/1/6~2/11
時間:9:30~17:00(入館は30分前まで)
休館:月曜日(祝日は開館し翌火曜が休館)
料金:一般¥1,500、会員¥1,200、高大生¥800、小中生¥500
刀剣博物館 公式サイト