この展覧会は新型コロナのため、2020/7/8~9/22 から 2021/6/30~9/12 に延期されました
7/8 鑑賞ログ追記
三菱の至宝展
明治時代に三菱財閥を創業した岩崎彌太郎氏を初代として、戦後の財閥解体まで4代にわたる当主は、古今東西の美術品を多く集めました。 2代目の彌之助氏と4代目の小彌太氏の蒐集した日本と東洋の古美術品は、静嘉堂文庫と東洋文庫の基礎となって、現在でも一般に公開されています。
三菱一号館美術館は、三菱が発展した土地で「三菱村」とも呼ばれる丸の内エリアで、お雇い外国人の「ジョサイア・コンドル」設計の三菱一号館を復元した美術館です。 19~20世紀の美術品を中心に、コレクション・展覧会をしていますが、2020年に迎えた三菱創業150年を記念して、三菱グループに関する美術品や資料を集めた展覧会です。
静嘉堂文庫から7件、東洋文庫から5件、合計12件の国宝全てが展示されるそうで、大変貴重な機会です。 国宝以外には、本能寺の変と大阪落城を経験した名物茶入「付藻茄子」や、黒田清輝など日本の近代絵画も出展されるようです。
この展覧会で観られる国宝(静嘉堂文庫より)
曜変天目茶碗(稲葉天目)
※通期
この展覧会チラシの表面にも登場している、天下の名品「稲葉天目」です。 静嘉堂文庫美術館で公開される機会が多いですが、アクセスの良い都心で観られるのは嬉しいです。
趙子昂書 与中峰明本尺贖
※前期(6/30~8/9)
中国の南宋の皇族だった「趙子昂」は、王朝が変わると元のフビライに仕えます。 王羲之流の書をよくした文人で、日本からの留学僧も参禅した「中峰明本」という僧に送った書状です。
倭漢朗詠抄(太田切)
※前期(6/30~8/9)は上巻、後期(8/11~9/12)は下巻
倭漢朗詠抄(和漢朗詠集)は、和=和歌と漢=漢詩を集めた歌集です。 漢字と仮名がそれぞれに美しいですが、書かれている紙も非常に華麗で美しいです。
風雨山水図 伝馬遠筆
※前期(6/30~8/9)
水墨画の名品で、中国の宮廷画家「馬遠」による山水図です。 墨だけでなく淡彩も組み合わされ、木々が風合いの異なる緑で淡く彩色されています。
源氏物語 関屋・澪標図屏風 宗達筆
※前期(6/30~8/9)は澪標、後期(8/11~9/12)は関屋
風神雷神図で有名な琳派の祖「俵屋宗達」による、源氏物語の2つの場面を描いた屏風です。 一面に金箔が貼られた中に華やかな色あいで、源氏とすれ違う2人の女性が描かれています。
禅機図断簡 智常禅師図 因陀羅筆
※後期(8/11~9/12)
中国元時代の禅僧「因陀羅」の禅画で、元は1巻だったと思われる5つの絵画が全て国宝に指定される「禅機図断簡」です。 独特の筆遣いで、中国には1つも残っていないんだそうです。
太刀 銘 包永
※前期(6/30~8/9)
大和(現在の奈良)の刀工「平三郎包永」による太刀です。 東大寺の転害門(てがいもん)前に住んだので、「手掻派(てがいは)」と呼ばれる一派で、包永は始祖とされます。
この展覧会で観られる国宝(東洋文庫より)
古文尚書
※前期(6/30~8/9)
尚書は儒教の経典で、日本でも古くから学ばれた「四書五経」の1つ「書経」の別名です。 唐時代の中国で書写されて、かなり古い時代に日本に伝わったようで、平安時代に日本で付け加えた記号が入っています。
史記(高山寺本)
※前期(6/30~8/9)は夏本紀、後期(8/11~9/12)は秦本紀
史記は中国の2000年以上の歴史が書かれた書物で、京都の高山寺に伝わった本品は平安時代に書写されたものです。
春秋経伝集解
※前期(6/30~8/9)
春秋は、四書五経の1つで「春秋経」とも呼ばれます。 紀元前の中国の歴史書で、春秋時代はこの春秋経から名前が取られたそうです。 これは、春秋経のテキストのようなものだそうです。
文選集注
※通期
「文選」は中国の詩や文章を編纂した詩文集で、日本でも奈良時代には教養階級の間で読まれていたそうです。 文選集注は文選のテキストで、中国の役人登用試験「科挙」の勉強には必読だったようです。
毛詩
※後期(8/11~9/12)
こちらも四書五経の1つ「詩経」です。 詩経は孔子が編纂したのですが、原本はすでになく、この版は毛兄弟によって伝えられたので「毛詩」と呼ばれます。 唐で書写されたもので、平安時代には日本で記号が加えられています。
展覧会 概要
この展覧会は新型コロナのため、2020/7/8~9/22 から 2021/6/30~9/12 に延期されました
期間:2021/6/30~9/12(前期:~8/9、後期:8/11~)
休日:月曜日、8/10(展示替え日)
時間:10:00~18:00(入館は30分前まで)
夜間:金曜、第2水曜、7/28~8/1、8/3~8、8/11~13、8/24~9/10は、21時まで
料金:一般¥1,900、高大生¥1,000、小中生¥500
三菱の至宝展 公式サイト
鑑賞ログ
昨年からの緊急事態宣言やまん防で、展覧会がいつ中止になるかわからないので、さっそく行ってまいりました。 今回は事前日時指定推奨ですが、人数に余裕があれば当日でも入れるようです。 春は静嘉堂の世田谷での最後の展覧会で、7件すべての国宝が公開されたばかりですが、今回は東洋文庫の5件が追加されて全12件の国宝公開なので、話題の展覧会になっているようです。 普段の静嘉堂や東洋文庫よりもかなりライトな客層で、立地も雰囲気もいいので、デートや女子会のついでにといったお客さんも多そうです。
今回は、コレクションを蒐集した岩崎家の4代にスポットがあてられていて、最初に岩崎家4代と茶入の「付藻茄子」など、いくつかの象徴的なコレクション、続く第2章は静嘉堂を創設した彌之助氏、第3章は東洋文庫の基礎になった久彌氏の学術書や古典籍のコレクション、第4章は静嘉堂を発展させた小彌太の茶道具を中心とした美術品、といった流れになっていました。
第1章は自己紹介と挨拶がわりのどうだ!な名物展示、第2章は古美術ダイジェスト、第3章は東洋文庫の普段の展覧会をフルパワーにした感じ、第4章は粋人の茶室、といった趣です。 正直なところ、数か月前に比較的空いていて観やすい環境の静嘉堂で国宝全公開を観てきた後なので、本当は非常にありがたいはずの展示なのですが、ちょっと観ずらかったなというのが本音。 こちらの方がオシャレな展示ですが、それが仇となってか、ちょっとワイワイガヤガヤしすぎて、ガチな人が数人いるだけの東洋文庫が恋しくなってしまいました。
効率よくたくさんの国宝を観賞できるので、コスパ的には納得価格かなと思います。 日本と東洋美術の代表的な作品が並ぶので、何か特に好きな分野があるわけじゃない人も、飽きることなく楽しめる展覧会だと思います。 今回は観たことある作品が多かったので、約1時間半ほどかかりました。 できるだけ空いていそうな日時を選ぶことをおすすめします。