日本美術をひも解く 展
文化庁・宮内庁・読売新聞社が連携する「紡ぐプロジェクト」は、゛皇室ゆかりの美術工芸品や国宝・重要文化財など、日本の美を未来へ伝え、世界へ発信していく“ 取り組みだそうで、展覧会や舞台を主催したり、文化財の修理を助成したり、WEBで日本文化の情報を発信したりと、日本美術や伝統芸能が好きな方はご存じの方が多いでしょう。
紡ぐプロジェクトの夏の特別展は、上野公園に隣接する東京藝術大学の付属博物館で、皇室の名宝を中心とした展覧会です。 令和の御代替わりの年には、即位記念という事で皇室関連の展覧会が多く開かれましたが、コロナ禍もあってか皇室関連の大規模な展覧会は久しぶりな気がします。
古くから皇室に伝わったり献上された文物は「御物(ぎょぶつ)」と呼ばれ、宮内庁が管理しているため、文化財の保護や海外流出を防ぐために出来た文化財保護法の指定は受けていませんでした。 ところが、2021年に宮内庁三の丸尚蔵館が保管していた絵画4件と書跡1件が国宝に指定され、今回は三の丸尚蔵館の国宝全てが一堂に公開される初の大規模展覧会となります。
展覧会は4章+序章で構成され、古写経や和歌集などの「文字からはじまる日本の美」、絵巻物と絵巻をモチーフにした工芸品などの「人と物語の共演」、生き物の絵画や工芸品の「生き物わくわく」、風景画や自然を題材にした工芸品などの「風景に心を寄せる」に、「美の玉手箱を開けましょう」という序章が付きます。 国宝は1~3章に3件ずつあるのと、序章には国宝『救世観音立像』『四天王立像(法隆寺金堂)』『橘夫人念持仏』の拓本や、国宝『法隆寺 金堂』『平等院 鳳凰堂』の模型も展示されます。 古い伝来品と、明治の帝室技芸員による作品がほどよいバランスの、楽しみな展覧会です。
この展覧会で観られる国宝
※絵因果経以外は、宮内庁三の丸尚蔵館 所蔵
屏風土代(小野道風筆)
後期2:9/6~9/25
花札で傘を持って蛙を見つめる人物、といった方が分かりやすいかもしれない「小野道風」は、日本風の書道「和様」の大成者として藤原佐理・藤原行成と共に「三跡(三蹟)」と称されます。 醍醐天皇から3代の天皇に仕え、朱雀天皇と村上天皇の大嘗会で色紙形を書くという名誉を受けていています。 この作品は、醍醐天皇の命で宮中の屏風を書く時の下書きで、日本紀略にも下命のことが記録されています。
絵因果経[東京藝術大学]
これは、会場の東京藝術大学が所蔵する国宝2件のうちの1件で、奈良時代に書かれた経典で、下半分にはお釈迦様の前世と現生の出来事が書かれ、上半分にはそれが図解されています。 絵は「奈良絵」のような素朴なタッチで、色数も墨に朱や緑などとそれほど多くなく、現代の「ゆるかわ」的な印象を受けるものです。
春日権現験記絵(高階隆兼筆)
鎌倉時代の宮廷絵師「高階隆兼」によって描かれた絵巻物で、春日明神の霊験あらたかな逸話で構成され、全20巻が揃っています。 鎌倉時代に左大臣を務めた藤原氏の西園寺公衡が発願したもので、延慶2年(1309年)の目録が残っていて、制作の背景などが分かるのも貴重です。
蒙古襲来絵詞
鎌倉時代の日本に2度に渡って元(モンゴル)の軍が攻め寄せた「元寇」について、九州の御家人「竹崎季長」の活躍が描かれた絵巻物です。 人物には名前が書き込まれ、服装や使っている武器なども細かく描かれているので、歴史資料としても価値が高いとされています。
唐獅子図(狩野永徳筆)
前期1:8/6~8/28
安土桃山時代を中心に活躍した狩野永徳は、織田信長の安土城や豊臣秀吉の大阪城と聚楽第など、天下人達のシンボル的建造物の障壁画を手掛けていますが、そのほとんどが失われています。 これは秀吉が毛利に贈ったといわれる陣中屏風で、とても大型でダイナミックな獅子が描かれています。 対の屏風は、曾孫の狩野常信が制作したものです。
動植彩絵(伊藤若冲筆)
後期1:8/30~9/25
江戸時代の中頃に京都で活躍した絵師の伊藤若冲は、鶏などの鳥類を得意としていて、墨画や日本画で多くの作品を残しますが、この作品が初の国宝指定となります。 若冲は相国寺と縁が深く、現在も相国寺に伝わる「釈迦三尊」の三幅対の掛軸と共に、若冲が相国寺に奉納した花鳥画です。 全30幅のうち、今回は10幅が公開されます。
展覧会 概要
日程:2022/8/6~9/25
休館:月曜日(9/19は開館)
時間:10:00~17:00
料金:一般¥2,000、高大生¥1,200