スポンサーリンク

九州国立博物館「九州の国宝 きゅーはくのたから」2025/7/5~8/31[福岡]

情報-博物館・美術館

九州の国宝 きゅーはくのたから 展

GW前から6月中旬は、万博オープンに合わせて関西で国宝展がいくつかあり、大変な話題と賑わいをみせていました。 九州からも数多くの国宝が出張していて、特に大阪市立美術館では金印を観る人の大行列が印象深かったです。 続いての夏休み期間は、大宰府にある九州国立博物館で国宝展が開催されます。 九州国立博物館が開館したのは平成17年なので今年は開館20周年にあたり、九州にある国宝だけでなく九州ゆかりの国宝が全国から集まり、その数25件60点に及ぶ大規模な国宝展です。 

この展覧会で観られる国宝

あくまでもここ10年ほどの管理人の感覚によるものですが、国宝公開のレア度「公開少なめ」「公開やや少なめ」のラベルと、定期的な公開情報等があるものにもラベルを付けました。 ここ数年は公開少なめでも、所縁の人物の遠忌があったり修理が終わったりで公開が頻繁になることもありますし、九州での公開は極まれといったケースもありますので、あくまでも参考程度にお考え下さい。

公開少なめ 5~10年レベルでしか公開されないもの
公開やや少なめ それよりもやや多いが公開が珍しいもの
年に〇度公開 定期的なご開帳があるものや、原則として年に1度は公開されるもの
所蔵館で常時公開 寺院や所蔵館で原則として常時公開されているもの

ラベル無し 1~3年単位で公開されそうなもの

考古資料・歴史資料

金印 漢委奴國王[福岡市博物館] 7/23~8/3 所蔵館で常時公開

教科書にも載る、漢時代の中国皇帝から贈られた純金製の印で、一番小さな国宝としても有名です。 展示期間は短いのですが、8/5以降は福岡市博物館の通常展示に復帰するようで、そちらでは写真撮影も可能です。

平原方形周溝墓出土品[国(文化庁)]通期

糸島市で発見された古代の墳墓で、一番大きい1号墓は伊都国の王墓だとする説が有力です。 この墳墓からは数多くの鏡が出土していて、その中から3点と大刀や装飾品が公開されます。 伊都国歴史博物館では常時複数点の国宝が公開されている他、九博の文化交流展にも登場することがあります。

・内行花文八葉鏡(11号鏡)
・方格規矩四神鏡(8号鏡)
・方格規矩四神鏡(25号鏡)
・紺色ガラス製小玉
・瑪瑙製管玉
・鉄製素環頭大刀

宗像大社沖津宮祭祀遺跡出土品[宗像大社/福岡]宝物館・通常展で常時複数点を公開

宗像市の海岸から約60kmの孤島「沖ノ島」は島全体がご神体で、古代から多くの祭祀が執り行われ、8万点を超える遺物が発見されています。 この展覧会では展示替えをしながら常時7点が公開されていますが、文化交流展(通常展)でも十数点が公開されています。 宗像大社の神宝館でもかなりの数が常時公開されています。

通期
・三角縁四神文帯二神二獣鏡
・夔鳳鏡
・奈良三彩小壺
・滑石製子持勾玉
・ガラス製玉類

7/5~7/21
・金銅製龍頭

7/5~8/3
・金銅製心葉形杏葉

7/23~8/3
・金製指輪

8/5~8/31
・金銅製高機
・金銅製帯金具

宮地嶽古墳出土品[宮地嶽神社/福岡] 通期 九博で常時数点を公開

宮地嶽古墳は、古墳時代の終わり頃6~7世紀頃の大型円墳で、石室の大きさは石舞台古墳に次ぐ日本で2番目の大きさです。 江戸時代に古墳が発見されて、馬具や装身具など300点を超える副葬品も見つかりました。 こちらも文化交流展(通常展)で数点が公開されています。

・金銅製壺鐙
・金銅装頭椎大刀
・長方形緑瑠璃板
・緑瑠璃板断片
・蓋付銅鋺
・銅盤

銅筥・銅板法華経[国玉神社/福岡]通期

福岡県と大分県の県境に近い山合いにある求菩提山は、役行者が入山したと伝わる古刹で、修験道の道場として栄えました。 この国宝は銅板に法華経と般若心経を線刻したもので、康治元年(1142年)に僧の頼厳によって奉納されました。 銅板33枚を納めた銅筥の表面には、阿弥陀三尊・釈迦如来と多宝如来・毘沙門天・不動明王が線刻されています。 九博の文化交流展で時々公開されます。

日向国西都原古墳 金銅馬具類[五島美術館/東京]通期

宮崎県の中心部に位置する西都原古墳群には300を超える古墳があり、そこで発見されたと伝わる馬具類です。 細かい透彫の細工が見事で、大陸からもたらされたと考えられています。 東京の五島美術館で数年に1度は公開されますが、九州への里帰りは貴重な機会です。

・金銅製鞍金具
・金銅製透彫飾金具
・金銅製透彫辻金具
・金銅製透彫杏葉・金銅製杏葉
・金銅製透彫鏡板
・金銅製透彫雲珠・金銅製雲珠・金銅製辻金具・金銅製鉸具

江田船山古墳出土品[東京国立博物館]通期 東博で常時数点を公開

江田船山古墳は、熊本県北西部に位置する5世紀後半~6世紀初頭の前方後円墳で、明治初頭に多数の副葬品が発掘されました。 現在は東京国立博物館でかなりの数が常時公開されていますが、今回はその中から4点が出展されます。
・金製耳飾
・金製耳飾
・金銅製沓
・蓋坏

国宝『江田船山古墳出土品』金銅製沓

※この写真は東京国立博物館で撮影したものです

琉球国王尚家関係資料[那覇市歴史博物館]所蔵館で常時複数点を公開

琉球王の尚家に伝わった工芸品85点と、古文書・文書類1,166点が国宝に指定されていて、今回は衣装と調度品が各期で1点ずつ、古文書3点は通期で公開されます。 那覇市歴史博物館では常時数点ずつの衣装と調度品が公開されていますが、他の場所で衣装類が公開されることは珍しいです。 文化交流展では7/6まで4点の古文書が公開されているので、7/5・6に行かれる方はそちらもお見逃しなく。

国宝『琉球国王尚家関係資料』

※この写真は東京国立博物館で撮影したものです

 通期 「進貢船仕出日記」「百浦添御普請絵図帳」「尚泰様御即位日記」
 7/5~7/21 「白地牡丹尾長鳥流水菖蒲文様紅型木綿衣裳」
 7/23~8/3 「黄色地鳳凰蝙蝠宝尽青海波立波文様紅型綾袷衣裳」
 7/5~8/3 「朱漆牡丹唐草七宝繋沈金料紙箱」
 8/5~8/17 「紅色地龍宝珠瑞雲文様紅型綾袷衣裳」
 8/19~8/31 「白地流水菖蒲蝶燕文様紅型苧麻衣裳」
 8/5~8/31 「黒漆雲龍螺鈿東道盆」

刀剣

太刀 銘 安家[京都国立博物館]通期

伯耆(現在の鳥取県)で平安時代末に作られた太刀で、現在は京都国立博物館の所蔵ですが、元は黒田家に伝わったということで、今回出展されたようです。 黒田家が所蔵していた他の刀剣類と再会できて喜んでいるのではないでしょうか。

太刀 無銘一文字(日光一文字)[福岡市博物館]通期 毎年2月頃に公開 刀剣乱舞

日光一文字の号の通り、元は日光二荒山神社に奉納されていた太刀で、福岡一文字派によるものですが奉納刀の為か無銘です。 後に後北条家の所有になり、秀吉による小田原城攻めの時に、使者となった黒田官兵衛に贈られて黒田家が所有していました。 毎年2月頃に福岡市博物館で公開されます。

短刀 銘 吉光[立花家史料館/福岡]通期

柳川藩主の立花家に伝わる短刀で、立花家の先祖が足利尊氏から拝領したという由緒ある品です。 秀吉から「天下の三名工」と称えられた山城国粟田口派の藤四郎吉光という刀工による短刀です。 

刀 金象嵌銘長谷部国重本阿花押(名物 へし切)[福岡市博物館]通期 毎年1月頃に公開 刀剣乱舞

こちらも黒田家が所有していた刀で、正宗十哲の1人で山城国で長谷部派を興した国重による刀です。 元は信長の愛刀で、信長が棚の下に隠れた茶坊主を手打ちにしようと圧し(へし)切ったことからこの号がつきました。 毎年1月頃に福岡市博物館で公開されます。

太刀 銘 国宗[照国神社/鹿児島]通期

鎌倉時代中頃の備前の刀工 国宗による太刀で、豪壮な姿に丁子乱れが華やかなひと振です。 薩摩の島津家が昭和2年に照国神社に奉納した後、第二次大戦で行方不明になっていましたが、アメリカ人の愛刀家がアメリカで発見して照国神社に戻されました。

刀 無銘則房[九州国立博物館]通期

作者の則房は、福岡一文字派として活躍した後に備中の片山に移ったので「片山一文字派」と呼ばれ、華やかな丁子乱れの刃文を特徴とします。 鎺の葵紋から徳川将軍家に関係するもののようですが、詳しい来歴は不明なようです。 九州国立博物館が所蔵する国宝刀剣のうちの1口です。

太刀 銘 来国光[九州国立博物館]通期ら

九州国立博物館のもう1つの国宝刀剣は、山城国(現在の京都)来派の刀工 国光による太刀です。 家康の外孫で後に養子になった松平忠明が大坂の陣で佩刀したと伝わり、明治時代に山縣有朋が自邸へ行幸した明治天皇へ献上しました。 

太刀 銘 豊後国行平作(古今伝授の太刀)[永青文庫/東京]前期(7/5~8/3) 刀剣乱舞

他の国宝刀剣は、現在九州にあるか九州ゆかりの人物に関わるものですが、この太刀は豊後国(現在の大分県)産で後鳥羽院の番鍛冶もつとめた名工の行平による太刀です。 戦国時代に古今和歌集の奥義を伝授された唯一の人物だった細川幽斎が石田勢に囲まれ、奥義が失われないように朝廷からの勅使として公家数名が城に入り、幽斎から奥義を伝授された際にこの太刀も譲られたので「古今伝授の太刀」と呼ばれています。

梵鐘

梵鐘[観世音寺/福岡]通期 九博で常時公開

現存する最古級の梵鐘で、妙心寺の国宝梵鐘と同じ型で作られた兄弟鐘だそうで、妙心寺の梵鐘には戊戌年(698年)の銘があるので、この梵鐘も同時代頃だと考えられています。 菅原道真が大宰府で詠んだ漢詩「都府楼纔看瓦色 観音寺唯聴鐘聲(都府楼はわずかに瓦色を看る 観音寺はただ鐘声を聴く)」はこの鐘を詠んだものだそうです。 5年前までは観世音寺の鐘楼につるされていましたが、ここしばらくは九州国立博物館の文化交流展で公開されていました。 この国宝展が終わるとまた文化交流展に戻るようです。 

※この写真は鐘が観世音寺にあった頃に撮影しました

梵鐘[西光寺/福岡]通期 現地で常時公開

承知6年(839年)の銘がある梵鐘は、元は伯耆国鴨部郷(鳥取県西伯郡)の金石寺の鐘として鋳造されたもので、後に出雲大社に寄進されたり別の寺に移され、松江市の金物店から大阪の商人に転売されたりと流浪しますが、明治期に西光寺のご住職が購入して現在も寺の収蔵庫に納められています。 西光寺では1・16日以外はガラス越しで観ることになるので、間近で観られる貴重な機会です。

絵画

蒙古襲来絵詞[三の丸尚蔵館/東京]前期(7/5~8/3)

2度の元寇で戦った肥後国(現在の熊本県)の御家人「竹崎季長(たけざきすえなが)」が氏神の甲佐大明神へ奉納するために描かせた絵巻物です。 絵画や詞書も美しいですが、画中の人物には人名が添えられていたり、服装や武器などが正確に描かれているので、歴史資料としての評価も非常に高いのです。 今回は2巻のうち後巻が公開されます。

国宝『蒙古襲来絵詞』三の丸尚蔵館

※この写真は三の丸尚蔵館で撮影したものです

周茂叔愛蓮図[九州国立博物館]前期(7/5~8/3)

日本絵画の愛好家でなくても「狩野派」という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか? この掛軸は狩野派の初代で足利将軍家の御用絵師だった狩野正信によるもので、蓮を愛した中国北宋時代(11世紀頃)の儒学者の周茂叔が描かれています。

書跡・古文書

催馬楽譜[鍋島報效会/佐賀]通期 公開少なめ

催馬楽(さいばら)は、庶民に親しまれていた民謡に、唐から伝わった雅楽の伴奏をあわせて、貴族の宴会などで演奏されたもので、催馬楽譜は歌詞と旋律や拍子などが書かれ譜面です。 佐賀藩主の鍋島家に伝来した現存最古の催馬楽譜で、飛雲という染紙を使った雅なものです。 佐賀県の鍋島徴古館で時々公開されますが、観るのが難しい国宝の1つかと思います。

栄花物語[九州国立博物館]通期

藤原道長の栄華を中心にした歴史書で、宇多天皇から堀河天皇まで15代の御代が正編30巻・続編10巻に書かれ、正編の作者はあの赤染衛門だといわれます。 栄花物語の原本は現存せず、公家の三条西家に伝来した鎌倉時代初期~中期頃に書かれたこの写本が最古のものです。

肥前国風土記[個人蔵]通期

元明天皇が各地の風土や文化を報告させる勅命を和銅6年(713年)に出して、各国ごとに〇〇風土記が作られました。 こちらは現在の佐賀県と長崎県の一部にあたる「肥前」の風土記で、他の九州地方の風土記との共通性が多いので、大宰府で編纂されたと考えられています。 通期で公開されますが、途中で頁替えがあります。

翰苑[太宰府天満宮/福岡]後期(8/5~8/31) 公開少なめ

翰苑(かんえん)は、物事をジャンルごとに分けて編纂する「類書」と呼ばれる百科事典のような様式の書物で、中国唐時代の初期に成立しますが中国では失われ、この平安時代の写本が現存唯一のものです。 後期だけの公開ですが、公開される機会が少ないのでぜひ観ておきたい1点です。

誓願寺盂蘭盆縁起[誓願寺/福岡]後期(8/5~8/31) 公開やや少なめ

日本に禅の臨済宗を伝えて建仁寺を創建した栄西(えいさい、ようさい)は、2度の入宋の間に3年ほど福岡市西区にある「誓願寺」に滞在しました。 その期間に誓願寺で行われた盂蘭盆会(お盆)の法要の由来などを栄西が記したものです。 様々な色の紙を継いで雲母刷りを施した装飾料紙を使って、当時の最先端だった宋風の筆跡で書かれています。 国宝の附の「誓願寺建立縁起」も公開されます。

展覧会 概要

日程:2025/7/5~8/31
休館:月曜日(7/21と8/11は開館)、7/22
時間:9:30~17:00(入館は30分前まで)
夜間:金・土は20時まで延長(入館は30分前まで)
料金:一般¥2,000、高大生¥1,000、小中生無料

九州国立博物館 公式サイト


タイトルとURLをコピーしました