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情報|文化学園服飾博物館「再現 女性の服装1500年」2021/7/5~9/28[東京]

国宝じゃないけど

再現 女性の服装1500年 -京都の染織技術の粋-展

戦前の京都で、葵祭・祇園祭・時代祭と並ぶ四大祭として、行政と染織業界が行った「染織祭」は、芸妓が古墳時代から江戸末期までの時代衣装を着て練り歩く、女性風俗行列が人気のお祭りだったそうです。 日中戦争で行列が中止になり、戦後も行列は復活することなく、祭自体も開催されなくなってしまいました。 143領の時代衣装は現在の公益社団法人京都染織文化協会に引き継がれ、今年は同協会の設立80周年を記念して、文化学園との共催で展覧会が開かれることになったようです。 衣装についてかなり詳しい説明がされていますし、特に女性は楽しめるのではないでしょうか。 入場料が¥500というのはかなりお得で、ぐるっとパスで入場可能です。

文化学園服飾博物館「再現 女性の服装1500年」チラシより

第1部 移り変わる風俗

2階フロアの第1部では、「移り変わる風俗」として、埴輪などから再現した古墳時代の服装から、江戸末期の階層の違う女性たちの服装まで、しっかりとした時代考証と高い技術で、非常に見応えがあります。 染織祭の古写真も展示されていて、戦前の芸妓さん達のおっとりとした美しさが、とても魅力的でした。

第2部 京都の染織技術ここにあり─文化学園服飾博物館所蔵品

1階の第2部では、文化学園が所蔵する日本服飾の名品を、技術面から紹介する展示です。 摺箔や疋田絞り(鹿の子絞り)は、完成までの段階もあわせて展示されていたり、専門博物館ならではの詳しい説明で、今後別の博物館で衣装を観るときの参考になります。

文化学園服飾博物館「再現 女性の服装1500年」チラシより

時代衣装が観られる国宝いろいろ(国宝の展示はありません)

このサイトは国宝についての情報サイトですので、この展覧会で観た時代衣装がどんな国宝に登場するか、まとめてみました。 一度、実物を見ておくと、美術品など観た時によりイメージが膨らむのではないでしょうか。

上古時代

日本にはまだ文字が無い時代、埴輪などの出土品から再現しているようです。 草木染めなんでしょうか?とても柔らかな色合いが美しいです。 国宝『群馬県綿貫観音山古墳出土品』の埴輪も、今回展示されていた衣装のように胸元にリボンを結んでいます。

奈良時代

中国の影響が強い奈良時代の装束は、正倉院宝物から復元されたようです。 色彩も当時の技法が取り入れられたのか、自然な色合いで、原色が多用されていてもどぎつい感じは全くありません。 光明皇后をモデルにしたと伝わる薬師寺の国宝絵画『吉祥天像』や、もう少し時代が古いかもしれませんが『高松塚古墳壁画』も女子群像の衣装に近そうです。

平安時代

染織祭の時代衣装は、外を歩く行列のために作られたので、裾を引くために行列できない平安時代の衣装は作られなかったのだそうです。 展覧会では、文化学園が所蔵する、大正時代の五節の舞姫の唐衣裳装束(十二単)が展示されていました。 この当時の衣装は現存していないのですが、鶴岡八幡宮の『古神宝類』や、熊野速玉大社の『古神宝類』には、平安時代の公家装束を踏襲した神様の衣装が含まれます。 絵画では、五島美術館の『源氏物語絵巻』や『紫式部日記絵詞』、徳川美術館の『源氏物語絵巻』、大和文華館の『寝覚物語絵巻』や四天王寺の『扇面法華経冊子』で観ることができます。

鎌倉時代

武士の世の中になると、高貴な女性も外で活動するようになります。 物詣をする壺装束の貴女と、付き従う侍女の衣装が展示されていました。 壺装束の女性が首から下げる『懸守』は、大阪の四天王寺に7点が伝わっています。 この頃から絵巻物に庶民の姿が登場しますので、東京国立博物館『一遍上人絵伝(一遍聖絵)』や、遊行寺の『遍上人絵伝(一遍聖絵)』には、念仏踊りを見物する女性たちがたくさん描かれています。

室町時代

余裕のできた庶民が、上流の風俗を真似るようになって、辻が花染めの小袖などが流行します。 この時代は帯が細く、裾がやや広がるような着付けがされていました。 国宝では、狩野秀賴による『観楓図屏風』が室町時代の後期頃に描かれたもので、楽しそうに紅葉狩りをする女性たちは、縞や絞りの小袖を細い帯で着ています。

安土桃山時代

形は室町時代からあまり変化がありませんが、意匠が大胆になっていきます。 信長や秀吉が天下人だった時代なので、女性の衣装もとても華やかです。 狩野長信の『花下遊楽図屏風』では、男女ともに大胆な色遣いの衣装を着ています。 安土城や大阪城の障壁画を手掛けた狩野永徳の『洛中洛外図屏風(上杉本)』は1560年代頃の京都が描かれています。

江戸時代

江戸時代とひとくくりに言っても250年間もありますし、江戸と上方、武家と公家と庶民でも衣装が異なります。 江戸初期から始まって、江戸の富裕な庶民の衣装を中心に、流行の移り変わりが細かく展示されていました。 華やかな友禅染めから、粋が最上へと価値観が変わって、見えないところや地味なのに手が込んだ染めが面白いです。 国宝で観られるのは江戸初期の衣装ですが、『松浦屏風』や『彦根屏風』など風俗図屏風が流行したので、遊女の最先端ファッションが伺えますし、岩佐又兵衛の描いた『洛中洛外図屏風(舟木本)』は江戸時代初期の京都が描かれています。 徳川美術館の『婚礼調度(初音の調度)』からも、上流武家の華やかさが伺えます。

展覧会 概要

期間:2021/7/15~9/28
時間:10:00~16:30(入館は30分前まで)
休館:日曜・祝日・夏休み(8/7~17)
料金:一般¥500、大高生¥300、小中生¥200

文化学園服飾博物館 公式サイト

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