京(みやこ)の国宝―守り伝える日本のたから― 展
2020年の春にリニューアルオープンした「京都市京セラ美術館(旧名:京都市美術館)」の開館記念で企画されていた展覧会ですが、新型コロナの関係で早々に中止が発表されました。 かなり楽しみにしていたのでガッカリしていたら、今年、会場を京都国立博物館に移して開催されることになりました。 去年から状況があまり改善されていませんし、今年開催されても近隣の方しか行けないかもしれませんが、許されるなら遠征したい、ものすごい展覧会です。
実は、ネット検索していたら偶然、展示設営の入札資料を発見して、そこに書かれたジャンルやサイズ、年代などのヒントから、何が展示されるか予想していたのです。(気になる方はこちらをご覧ください)
開催日程が変わったので、内容に変更があったようですが、絵画21件、書跡典籍10件、古文書5件、考古資料・歴史資料6件、彫刻6件、工芸品21件、御物5件という、非常に豪華なラインナップになっています。 半数ほどは期間を通しての展示で、残りの大半が前期(7/24~8/22)と後期(8/24~9/12)に分かれています。 ただ、一部の絵画は公開期間が短く、風神雷神は2週間弱、与謝蕪村の『夜色楼台図』、浦上玉堂の『凍雲篩雪図』、狩野長信の『花下有遊楽図屏風』は、9/7~12のわずか6日間しか公開されません。 今月のカレンダーでは公開日程別に並べていますので、そちらで訪問日をよく吟味してみてください。
この展覧会で観られる国宝
※=期間内で展示替えあり
今月のカレンダー では、公開日程別に並べています
絵画
十二天像[京都国立博物館] ※ 通期
元は宮中で、現在も東寺で続けられている修法「後七日御修法」で使用された、平安時代後期の仏画です。 十二天がそれぞれ脇侍を従えた三尊形式で、12幅の掛軸のうち前後期で4幅ずつが公開されます。
平家納経[厳島神社/広島]※ 通期
平清盛ら全盛期の平家一門が、1人1巻ずつを受け持って写経し、厳島神社に奉納した華麗な装飾経です。 経典ですが「絵画」として国宝に指定されていて、前後期でそれぞれ1巻ずつが公開されます。
病草紙[京都国立博物館] ※ 通期
平安末~鎌倉時代頃に作られた、元は絵巻物でしたが現在は10面の絵画で、色々な奇病や治療法が描かれています。 苦しそうですが、どこか愛嬌やおかしみがあり、六道絵の一種とする説もあるようです。 前期は「風病の男」で、後期は「歯の揺らぐ男」です。
法然上人行状絵図[知恩院/京都]※ 通期
浄土宗を開いた法然上人の伝記絵巻で、法話や著述なども記されています。 法然上人の没後100年ほど後に作られたもので、浄土宗総本山の知恩院に伝わる48巻から、前後それぞれ1巻ずつが公開されます。
玄奘三蔵絵(高階隆兼筆)[藤田美術館/大阪]※ 通期
西域から経典を持ち帰り漢訳し、法相宗の八祖に数えられ、西遊記のモデルとしても有名な玄奘三蔵(三蔵法師)の伝記絵巻で、やまと絵で描かれています。 12巻のうち前後で1巻ずつ公開されます。
方丈障壁画(狩野松栄・永徳筆)[聚光院/京都]※ 通期
聚光院の方丈障壁画38面は、狩野派の3代目松栄と4代目永徳によって描かれた水墨画です。 今回は、前期に「琴棋書画図」、後期に「花鳥図」と、いずれも永徳によるものです。
山水屏風[京都国立博物館] 前期のみ
平安時代に作られた、仏教儀式に使う屏風で、東寺に伝わったものです。 やまと絵で中国の人物や風景を描く「唐絵」で、景色は日本らしいのに、唐風の風俗をした人物が描き込まれています。
釈迦如来像(赤釈迦)[神護寺/京都] 前期のみ
縦160cmほどもある大型の仏画で、平安時代末らしい貴族趣味で華やかな釈迦如来像です。 輪郭線が赤いことと、衣装が赤いことから「赤釈迦」の通称で呼ばれています。 毎年5月の神護寺の曝涼で公開されますが、この2年は曝涼が中止だったので、久々のお目見えです。
阿弥陀三尊像(普悦筆)[清浄華院/京都] 前期のみ
足利将軍家のコレクション「東山御物」で、阿弥陀三尊が3幅の掛軸に描かれています。 南宋時代の中国で描かれたもので、やや中央を向く脇侍や金泥で描かれた光輪など、エキゾチックな印象です。
天橋立図(雪舟筆)[京都国立博物館] 前期のみ
国宝に選ばれた件数が一番多い画家「雪舟」の水墨画で、80歳を超えた雪舟が現地の景色を観て描いたそうです。 サイズがバラバラの紙が継がれていて、下書きではないかといわれています。
松に秋草図屏風(長谷川等伯筆)[智積院/京都] 前期のみ
現在、智積院がある地には、かつて豊臣秀吉が夭逝した長男を弔うために建てた寺があり、長谷川等伯と久蔵父子が障壁画を描いています。 今回はその中から、等伯による「松に秋草図」の二曲一双の屏風が出展されます。
風神雷神図屏風(俵屋宗達筆)[建仁寺/京都]8/24~9/5
超有名で、国宝絵画といえばこれを思い浮かべる人も多そうな、俵屋宗達による風神雷神図屏風です。 筆跡がとても大胆でおおらかなので、ぜひ間近で眺めてください。 2週間だけの公開です。
瓢鮎図(如拙筆)[退蔵院/京都] 後期のみ
1951年の第1回目で国宝に指定された、下部に水墨画、上部に漢詩などを書く「詩画軸」の代表的な作品です。 口の狭い瓢箪で鮎(ナマズのこと)をとらえられるか?という禅問答で、上部には多くの僧がその回答を書いています。
十六羅漢図 第4尊者[東京国立博物館] 後期のみ
東京国立博物館によく行かれる方にはお馴染みの、平安時代に日本で描かれた十六羅漢図です。 同時期に公開される清凉寺の十六羅漢は同時代の中国製なので、見比べるのが楽しみです。
十六羅漢像 8幅[清凉寺/京都] 後期のみ
清凉寺の釈迦如来像と共に、宋から将来したといわれる十六羅漢の絵画で、16幅の掛軸が全て残っています。 今回はその中から8幅が後期にまとめて公開されます。
柴門新月図[藤田美術館/大阪] 後期のみ
瓢鮎図と同じ詩画軸で、月明かりの中で別れの挨拶をかわす人を描き、上部には18名が送別の賛を書いています。 イラスト入りの送別の寄せ書きで、昔の人も現代と同じことをしていたんですね。
山水図(雪舟筆)[個人蔵] 後期のみ
こちらも詩画軸で、雪舟の画に2名の僧が賛を書いていますが、その中に「雪舟逝」とあるので、雪舟の亡くなった後に書かれた追悼文のようです。 倉敷の大原美術館の創業家の所蔵品で、公開が少ない絵画です。
竹斎読書図(伝周文筆)[東京国立博物館] 後期のみ
周文(しゅうぶん)は相国寺の画僧で、雪舟の絵画の師といわれますが、間違いなく真筆というのは無いようで、この作品も“伝”周文となっています。 こちらも6名の僧が序と賛を書く詩画軸です。
金光明経(目無経)[京都国立博物館] 後期のみ
後白河法皇の周辺で絵巻物が制作されていたのですが、完成前に崩御されたので、輪郭線だけ描かれた料紙を使って金光明経を写経したものです。 人物の顔が描かれていないので「目無経」と通称されていて、絵画として国宝に指定されています。 文化財の調査と研究のコーナーに展示されます。
夜色楼台図(与謝蕪村筆)[個人蔵]9/7~9/12
文人画家の与謝蕪村が、京都の夜の街を描いた横長の掛軸で、白い雪と黒い夜景に、窓の明かりがほんわりと暖かく見えるホッコリ絵画です。 個人の所蔵品のため公開があり多くなく、今回も6日間だけの公開です。
凍雲篩雪図(浦上玉堂筆)[川端康成記念会]9/7~9/12
藩の重役だったのに脱藩して、京都を中心に活躍した文人の浦上玉堂が、東北を旅した時に雪山を描いた水墨画です。 美術品を愛した川端康成の旧蔵品です。
花下有遊楽図屏風(狩野長信筆)[東京国立博物館]9/7~9/12
狩野永徳の弟「狩野長信」が、左隻に花見の余興に踊る女性たちを眺める貴公子たち、右隻に花の下で宴をする貴女たちを描いた六曲一双の屏風です。 右隻の中央2扇が無いのは、修理中に関東大震災で焼失してしまったためで、文化財の防災と防犯のコーナーに出展されます。
書跡・典籍
※=期間内で展示替えあり
今月のカレンダー では、公開日程別に並べています
芦手絵和漢朗詠抄[京都国立博物館] ※ 通期
1951年に国宝指定されたもので、今回は「最初の国宝」に展示されます。 文字を絵の一部に溶け込ませたような「芦手絵」で、和漢=和歌と漢詩が華やかな料紙に書かれています。 全2巻が揃っていて、前後期で1巻ずつ公開されます。
三十帖冊子・宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱[仁和寺]※ 通期
空海が唐に留学した時に、仏教の経典や教義を書き記した冊子です。 目録では38冊ですが、現存するのは30冊で「三十帖冊子」と呼ばれています。 空海の自筆部分と写経生によるものとあるようで、前後期2冊ずつでは空海の自筆が観られるのでしょうか。 平安時代に作られた冊子箱も公開されます。
医心方[仁和寺/京都]※ 通期
平安時代の鍼博士が、中国の医学書を編纂して天皇に献上した日本最古の医学書で、仁和寺に5冊伝わるのは下書きから書写されたものだそうです。 前後期で1冊ずつ公開されます。
類聚古集[龍谷大学/京都]※ 通期
万葉集の写本ですが、類聚=分類ごとに集めたものです。 長歌や和歌など歌の種類で分け、更に春夏秋冬や、雨や桜など細かいキーワードごとに歌が並びます。 20冊の内、16冊が現存していて、前後期で1冊ずつ公開されます。
今昔物語集(鈴鹿本)[京都大学付属図書館]※ 通期
仏教説話や古い伝承話を集めた今昔物語の、平安~鎌倉時代に書写された現存最古の写本です。 前期に29巻、後期に27巻と、日本の話を集めた部分が公開されます。 今回の書跡典籍類の中では、公開が少ない方かもしれません。
宋版一切経[醍醐寺/京都]※ 通期
中国の宋時代は、印刷の技術が非常に発達したので、日本にも宋版の経典が多く伝わったそうです。 今回は醍醐寺に伝わる6,102帖のうち、前後期で1帖ずつと、経箱が公開されます。 醍醐寺の霊宝館など、公開される機会は比較的多いです。
禅院額字并牌字[東福寺/京都]※ 通期
禅寺でかけられる額字などの見本帳のようなもので、無準師範と張即之が書いたものがあります。 東京・京都・奈良の国立博物館に分かれて寄託されていて、今回は前期に「浴司」「普説」、後期に「方丈」「上堂」が公開されます。
東宝記[東寺/京都]※ 通期
南北朝~室町時代に編纂された東寺の資料で、仏像や仏具の配置、儀式の次第や東寺の歴史が書かれたものです。 春秋に開かれる東寺の宝物館でも、よく公開されます。
大燈国師墨蹟(関山字号)[妙心寺/京都] 前期のみ
大徳寺の開山、大燈国師=宗峰妙超が、弟子の関山慧玄に道号「関山」を与えた時に書いたものです。 大きく関山と書かれた下に、仏を讃える漢詩が書かれています。
無準師範墨蹟(円爾印可状)[東福寺/京都]後期のみ
東福寺の開山「円爾」が、留学した宋で師の無準師範から印可を与えられたときに書かれたものです。 非常に高名な僧で、書画も評価が高く、2点の国宝のうちの1点です。
古文書
御堂関白記[陽明文庫]※ 通期
藤原道長が、現代のカレンダーのような暦に自筆で記した日記です。 1951年の第1回で国宝に指定されていて「最初の国宝」の章で、前期は寛弘元年(1004年)、後期は寛弘8年(1011年)の日記が公開されます。
明月記 自筆本[冷泉家時雨亭文庫]※ 通期
和歌や書を得意とした藤原定家が、50年にわたって記した自筆の日記で、子孫の冷泉家に伝わったものです。 天変地異なども記録されていて、貴重な歴史資料でもあります。 前期は正治2年(1200年)後期は建暦2年(1212年)の日記です。
東寺百合文書[京都学・歴彩館]※ 通期
東寺の宝蔵に伝わった文書類で、儀式などの記録、有力者からの書状、荘園の運営に関することなど、様々な内容で構成されます。 2万点近い資料の中から、東寺の仏舎利を有力者へ譲った時の書状(前期は後醍醐天皇、後期は足利義満)や、庶民に関する資料が前後期で1通ずつ公開されます。
後醍醐天皇宸翰 天長印信[醍醐寺/京都]前期のみ
天長印信は、天長年間(824~834年)に空海が弟子に許可を書き与えたもので、書を得意とした後醍醐天皇が、吉野で崩御する年に書き写したものです。 後醍醐天皇の3件国宝に指定された書のうちの1点です。
ポルトガル国印度副王信書[妙法院/京都]後期のみ
豊臣秀吉がイエズス会の宣教師と面会した時に奉呈された、インド副王(ポルトガル人)からの書状です。 羊皮紙にポルトガル語で書かれていて、周囲には紋章などの絵が描かれています。
考古資料・歴史資料
崇福寺塔心礎納置品[近江神宮/滋賀] 通期
崇福寺は、天智天皇が遷都した大津京の鎮護として建てられた寺で、室町時代頃には廃寺になってしまいました。 その崇福寺の三重塔の心礎(中心の柱の土台)に納められていたもので、4重の容器に入った舎利、宝石や鏡などがあります。
金銅小野毛人墓誌[崇道神社/京都] 通期
崇道神社の裏山から、江戸時代初期に発見された墓にあった墓誌で、金銅(銅に金メッキ)製の板の裏表に48文字が刻まれています。 小野毛人は、遣隋使で有名な小野妹子の子供なんだそうです。
山科西野山古墳出土品 から「金装大刀」[京都大学総合博物館] 通期
平安時代初期の武官で、征夷大将軍だった坂上田村麻呂の墓だと推定される古墳からの出土品です。 田村麻呂は亡くなると武具を着けて東を向いて埋葬され、死後も都を守護したという伝説があり、この墓の出土品は伝説に合致するのだそうです。 田村麻呂のものだと思われる大刀が公開されます。
金銅藤原道長経筒[金峯神社/奈良] 通期
吉野の金峯山経塚から発見された経筒で、表面に彫られた511文字の銘文から、寛弘4年(1007年)に道長が自ら埋納したもののようです。 鎌倉~南北朝時代に盛んになる経塚の、最古級のものだそうです。
鞍馬寺経塚遺物[鞍馬寺/京都] 通期
鞍馬山の本堂裏にある経塚からは、平安時代後期~室町時代の埋納品200点ほどが見つかっていて、今回は平安時代後期の金銅製の三尊像、銅製の宝塔、銅製の経筒が公開されます。
伊能忠敬関係資料[伊能忠敬記念館/千葉]※ 通期
日本最初の実測地図を作ったことで有名な伊能忠敬に関する資料で、地図や日記、測量の道具など2,345点が国宝に指定されています。 今年は地図を上呈してから200年で、同時期に神戸市立博物館で伊能忠敬の特別展が開催されています。
彫刻
梵天座像[東寺/京都] 通期
東寺の立体曼荼羅で、向かって右端にいるガチョウに乗った梵天様です。 ペアの帝釈天像が、イケメン仏として有名ですが、こちらもふっくらとした素敵な風貌ですよ。
虚空蔵菩薩立像[醍醐寺/京都] 通期
比較的最近の2015年に国宝指定されたもので、指定前の重要文化財時代は聖観音立像でした。 カヤの木製ですが、香木で作った檀像と呼ばれる小型の仏像風に作られています。
雲中供養菩薩像[平等院鳳凰堂/京都] 通期
平等院鳳凰堂の、左右の長押あたりに散りばめられている小型の仏像で、菩薩や天女のような姿をしています。 全部で52躯ある中から、2躯が出展されます。
五智如来坐像[安祥寺/京都] 通期
私はひそかに京都国立博物館の本尊だと思っている五智如来で、神々しいのにどこか可愛らしさのある仏像は、文徳天皇の母皇太后が発願したものだそうです。
四天王立像 から「多聞天」[浄瑠璃寺/京都] 通期
四方を守る仏教の守護神「四天王」ですが、浄瑠璃寺の四天王は現在離れ離れになっています。 持国天と増長天は浄瑠璃寺に、広目天は東博、そして多聞天はこの京博に寄託されています。 多聞天は、単尊だと毘沙門天と呼ばれる、四天王のリーダーです。
二十八部衆立像 から「摩睺羅」「婆藪仙人」[三十三間堂/京都] 通期
京博の真向かいにある「三十三間堂」に安置される二十八部衆で、現地では千躯の千手観音の更に前に安置されていて、割と近くで観られます。 普段見られない背中を観賞できるような展示だといいなと思っています。
工芸品(刀剣)
太刀 銘 久国[文化庁] 通期
山城国粟田口派の刀工「久国」は、後鳥羽上皇の御番鍛冶に召された名工で、現存数が多くなく国宝に指定されたのはこの太刀のみです。 文化庁の所蔵なので、展覧会への出展が比較的多く、第1章の「最初の国宝」で展示されます。
刀 無銘 義弘「名物 富田江」[前田育徳会/東京] 前期のみ
正宗の弟子で越中(富山県)を拠点にした「郷(江)義弘」の刀は、古くから珍重されますが、数が少なく「郷とお化けは見たことがない」と珍しいものの例えにされるほどでした。 前田育徳会の文化財は公開が少ないので、この機会は逃したくないですね。
刀「名物 稲葉郷」[柏原美術館/山口] 前期のみ
柏原美術館(旧名:岩国美術館)が所蔵する郷の刀で、春日局の伯父が所持したので「稲葉郷」と呼ばれています。 こちらは毎年どこかで公開されますが、郷の刀が2本並ぶとは、とても貴重な展覧会ですね。
太刀 銘 定利(綾小路定利)[東京国立博物館] 後期のみ
京都・四条通の1本南にある「綾小路」に居を構えた刀工「定利」の太刀です。 雉子股形という茎(手に持つ部分)の細身の太刀です。
金地螺鈿毛抜形太刀[春日大社/奈良] 後期のみ
平安時代の衛府が帯びた「毛抜形太刀」は、柄の部分に透かし彫りされています。 この太刀は柄がメッキではなく純度の高い金でできていて、相当な有力者が春日大社に奉納したと考えられています。
菱作打刀[春日大社/奈良] 後期のみ
時代劇や歌舞伎で「腰の大小」と聞きますが、その大の方がこの「打刀」です。 黒漆地に金蒔絵でひし形を並べた拵があるので、この名前で呼ばれています。
梨地螺鈿金荘餝劔[東京国立博物館] 後期のみ
餝劔(飾剣)は、高位の公家が天皇の勅許で着用を許された刀剣で、非常に豪華な作りになっています。 蒔絵・螺鈿・金工と、平安時代の工芸の粋が観られます。
工芸品(その他)
線刻蔵王権現像[総持寺/東京] 通期
この展覧会では考古の章にでますが、国宝は工芸品として指定されています。 金属の板に蔵王権現と眷属を毛彫りしたもので、金峯山からの出土品です。 東京国立博物館に常時展示されているので、観た方も多いかもしれません。
熊野速玉大社 古神宝類[熊野速玉大社/和歌山] 通期
熊野三山の1つ熊野速玉大社に伝わる古神宝類で、足利義満が奉納した品々が中心になっています。 前後期で異なる手箱や衣装が展示されます。
金銀鍍透彫華籠[神照寺/滋賀] 通期
仏教の法要で、仏に捧げるために散華(紙で作った花びら)を撒きますが、その散華を入れる浅いザル状の容器が華籠(けこ)です。 平安時代と南北朝時代に作られた16個が並ぶようです。
金銅透彫舎利容器[西大寺/奈良] 通期
現在は西大寺のものですが、元は大安寺に安置されていたものだそうです。 とても繊細な透かし彫りで装飾してあり、屋根の蕨手には風鐸と瓔珞が下がるという豪華なものです。 華籠と舎利塔は、文化財の調査と研究コーナーで公開されます。
密教法具(空海請来)[東寺/京都] 前期のみ
密教の儀式で使用する道具で、唐に渡った空海が日本に持ち帰ったものです。 何点かは失われていて、現存する金剛盤・五鈷鈴・五鈷杵の3点が公開されます。
密教法具[厳島神社/広島] 前期のみ
こちらは鎌倉時代に日本で作られた法具で、金剛盤・五鈷鈴・独鈷杵・三鈷杵・五鈷杵の5点が揃っています。 空海請来の密教法具と同時期に公開されるので、唐と日本、9世紀と13世紀の違いを比べてみたいです。
宝相華蒔絵宝珠箱[仁和寺/京都] 前期のみ
宝珠は願いが意のままになると言われていて、屋根に飾られたり仏像が手にしたり、宝珠単独でも信仰の対象になりました。 これは宝珠を収める箱で、小型ですが宝相華や鳥が蒔絵で描かれた華やかなものです。
春日大社若宮御料古神宝類[春日大社/奈良] 前期のみ
春日大社の摂社で、12月の若宮御祭が行われる春日大社の若宮は、本宮の御子神がまつられています。 子供の神様ということで、武具や楽器、動物の置物などが多い中から、今回は武具が公開されるようです。
春日大社本宮御料古神宝類 から「山水蒔絵筝」[春日大社/奈良] 後期のみ
春日大社本宮の古神宝は、武具や調度品など292点があり、今回は蒔絵で山水を装飾した、筝という種類の琴が公開されます。
浅黄綾威鎧[厳島神社/広島] 前期のみ
河内源氏の源義家が奉納した大鎧だと伝わりますが、実際はもう少し後の時代に作られたもののようです。 金属類が銀色で、浅黄(水色)の綾糸で威し、銅の正面には不動明王を染め出した革が使われています。
木画経箱[東京国立博物館] 前期のみ
香木の沈香を薄い菱形にして、箱の表面にモザイクのように並べて模様にした経箱です。 菱形の境目には黒檀の細い線が嵌められていたようですが、もうあまり残っていないように見えます。 法隆寺献納物ですが、法隆寺宝物館に常設展示されていないので、観られる機会が少ないです。 御物コーナーで展示されます。
厳島神社古神宝類 から「松喰鶴小唐櫃」[厳島神社/広島] 後期のみ
厳島神社の古神宝類は、後白河法皇や高倉上皇が厳島神社に行幸した時の奉納品が中心になっています。 足つきの箱「唐櫃」に、公家で好まれる松を咥えた鶴の模様「松喰鶴」で飾られています。
小桜韋黄返威鎧[厳島神社/広島] 後期のみ
源為朝のものだとされる鎧で、韋(鹿のなめし革)を小桜模様に染めたもので威されています。 厳島神社の甲冑類は、公開の機会が少ないので、前期の浅黄綾威鎧と共に観ておきたい1品です。
黒漆七絃琴[東京国立博物館] 後期のみ
法隆寺が明治天皇に献上し、今は東京国立博物館にある「法隆寺献納物」で、唐からもたらされた琴です。 開元12年(724年)という唐の元号が入っていて、制作年代がはっきりした七絃琴としては、世界最古のものです。 御物コーナーで展示されます。
御物
御物は天皇家に伝わる宝物類で、宮内庁の管理下にあり十分な保護がされているということで、国宝や重文といった文化財の指定はされません。 ですが、国宝級のものがたくさんあり、今回も貴重な5点が公開されます。
御物「春日権現験記絵」高階隆兼筆[宮内庁三の丸尚蔵館]※ 通期
藤原氏の氏神「春日大社」の霊験が書かれた絵巻物で、絵は鎌倉時代の宮廷絵師「高階隆兼」が、詞書は鷹司基忠ら4人が書いています。 今回の展覧会では、高階隆兼による『玄奘三蔵絵』も出ていますので、そちらと見比べてみたいです。
御物「天子摂関御影」豪信筆[宮内庁三の丸尚蔵館]※ 通期
平安後期~鎌倉時代の天皇と摂政・関白・大臣らの肖像画集です。 全4巻から、前期には摂関巻が、後期には大臣巻の2巻が公開されます。 作者の豪信は、国宝の『花園天皇像』を描いた絵師で、鎌倉時代に流行した「似せ絵」の名手です。
御物「小栗判官絵巻」岩佐又兵衛筆[宮内庁三の丸尚蔵館]※ 通期
戦国武将の荒木村重の子だといわれる岩佐又兵衛の描いた絵巻物語で、全15巻、全長324mもある大作です。 比較的時代が新しいので、色彩がまだしっかりと残っていて、華やかで迫力のある絵巻物です。 作者の岩佐又兵衛は、今回は出展されていませんが、東京国立博物館の国宝『洛中洛外図屏風』を書いています。
御物「雲紙本和漢朗詠集」下巻[宮内庁三の丸尚蔵館] 前期
雲紙は、藍や紫に染めた繊維をすき込んだ紙で、この巻物は右下と左上を藍に染めた紙を継いでいます。 和漢(和歌と漢詩)の朗詠(声に出して詠むこと)のための歌集で、平安時代中期の能書家「源兼行」が書いています。 源兼行は、国宝の『高野切』を書いた何人かの1人だと言われています。
御物「玉泉帖」小野道風筆[宮内庁三の丸尚蔵館] 後期
花札の雨の札でおなじみの小野道風は、和様の書道を確立した人物で、藤原佐理と藤原行成とで「三跡」とされています。 現存する真筆は少なく、『智証大師諡号勅書』など国宝2件と、御物にもう1点あるのみです。
展覧会 概要
期間:2021/7/24~9/12
休館:月曜日(8/9は開館、8/10は休館)
時間:9:00~17:30
料金:一般¥1,600、大学生¥1,200、高校生¥700